[続]初恋cherry.(1〜77)
□27話
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『俺、コイツもらうわ』
そう一言告げたあと、南さんは一方的に電話を切って私に携帯を渡してきた。
「ん」
「ちょっ!ちょっと南さん!何言ってるんですか!?」
「?俺コイツもらうわ」
南さんが無表情でさっきと同じことを言い放った途端、私の携帯が鳴り出す。
きっと諸星くんだろう。
急にあんなことを言われて電話を切られて、焦っているに決まってる。
南さんの言葉に動揺しながらも私が電話を取ろうとすると
「取ったらあかん」
腕を掴まれた。
「っ、ちょっ!離してください!」
「嫌や」
鳴り続ける着信音。
それでも南さんは私の腕を離してはくれない。
「あのっ、さっきのことですけど、私、諸星くんと付き合ってるんですよ!?」
「そんなん、関係ないわ」
「好きになってもうたんやから、しゃーない」
「…っ」
着信音が、止まった。
「アンタうるさないし、なんや、チビで可愛いし……」
「さっき俺のことどう思ったか聞いたとき、“最初怖い人か思った”言うたやん?そういう素直なんエエなぁ思ったし」
「俺別に人と話すん好きちゃうけど、アンタと話すんは何か居心地良かってん」
「せやから、アンタとやったら恋愛も悪うないと思うたんよ」
「そういうことやから。ゆっくり考えて。ほなな」
私の腕を離して、南さんは行ってしまった。
私は何も言い返すことなく、ただ南さんの去って行く背中を見ていた。
……さっきのって、告白、だよね?
一瞬放心状態になるも、ハッと我に返って諸星くんに電話をかけ直す。
『咲季っ!?』
『諸星くん!』
諸星くんの声、すごく焦ってる……
『南は?』
『行っちゃった…』
『……さっきの、何で?』
『わ、かんない……何でなんだろう…』
本当に訳が分からない。
ほんの数回しか話したことがないのに…
『…咲季?』
『だっ、大丈夫!ちゃんと断るから!心配、しないでね?』
『うん、咲季のこと信じてるから大丈夫』
その後薬学部へ行ってみたけど、南さんの姿はなくて。
とりあえず諦めて帰宅した。