[続]初恋cherry.(1〜77)

□22話
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『俺そいつ知っとるわ』



右隣から声がした。



「えっ?」


声の方に顔を向けると、


「そいつ、愛知の星やろ?」


隣に座っていた男の人が、私の手にある携帯を見ながら言った。


今日の飲み会ではずっと女の子と居たから、男の人とは挨拶程度でほとんど話していない。

だからこの人のことは全然知らないんだけど、“愛知の星”って……諸星くんのことを知っているのは間違いなさそうだ。



「諸星くんのこと、知ってるんですか?」


「…高校のときバスケ部やったから」


無表情で淡々と返された。


「わあ、そうなんですか」

諸星くんが有名人だってことは知ってたつもりだったけど、飲み会で偶然会った人も知ってるなんて。
私の想像以上に諸星くんってすごい人だったらしい。



「自分、愛知の星の女?」


「あっ、えっと、はぃ」


「ふーん」



この人に話しかけられてから、何か引っかかるものがある。

何だろう……関西弁だから?
でも、土屋さんも岸本さんも関西弁だしなあ…………あっ!


「あっ、あのっ!大阪に岸本さんっていうお知り合い居ますか?」


「?地元のツレにおるけど…」


やっぱり!
絶対そうだ!


「あっ、あのですね、私の高校のときの親友が、今その岸本さんと付き合ってて、えっと、すみませんお名前…」

ユッちゃんや岸本さんがこの人の名前を口にしてた気がするけど、何せ半年以上前のことだから忘れてしまった。


「南烈」


「みなみ、つよしさん?」


「あぁ」


「あの、南さんと私が同じ大学だって2人から聞いていたので、まさか今日居ると思わなかったから…びっくりしました」


ほんと…びっくり。

世間って狭いなあ。



「…自分、名前は?」


「あっ、すみません。川瀬咲季といいます」


「そか」



確かに……ユッちゃんの言ってた通り、南さんは無愛想かもしれない。無表情だし。

でも、ユッちゃんの彼氏の友達だし、せっかく同じ大学に通ってるんだから、話せて良かったな。




家に帰って、諸星くんに電話をかける。


『もしもし諸星くん?今帰ったよ』

『おかえり。楽しかった?』

『うん!新しい友達もできたし楽しかったよ』

『そっか、良かった』


『あっ、あのね、去年の夏祭りのときにユッちゃんと岸本さんと話してた南さんって人が今日の飲み会に居たんだよ』

『お、南が?そういや咲季と同じ大学って言ってたもんなあ』

『うん。カラオケでたまたま隣に座っててね、諸星くんのこと知ってたよ』

『あ、マジで?』



それから、友達が諸星くんのことイケメンって言ってたよ〜なんて話してたら……



『あのさ……新しくできた友達って、男?』


『?女の子だよ?』

何でその質問をされたのかわからないまま答えると、


『そっか。…実はさ、ちょっと心配してたんだよね。ま、ただの勝手なヤキモチなんだけど。だから安心した』


そう、だったんだ…

私のうぬぼれじゃなかったんだ…

『あのね、ずっと女の子同士で居たから男の人とはあんまり話してないよ。だから、安心してね?』

『そっか…良かった。ごめん、相変わらずの小ささで』

『ふふっ、ううん、嬉しい』



心がくすぐったい。

私が諸星くん以外にときめくわけないのに。

こうやって心配してくれる人が居る私は、何て幸せ者なんだろう。

その相手が諸星くんだなんて、いつまでたっても信じられない。


今日も大好きが溢れて止まらないよ。

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