[続]初恋cherry.(1〜77)

□17話
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『げっ』


諸星くんは覗き穴を見てもドアを開けようとしない。


「どうしたの?」

不思議に思って聞いてみると、

「シィー!」


!???

人差し指を口の前に当てて、“喋らないで”ってジェスチャーされた。

状況が飲み込めないまま諸星くんに言われた通り黙っていたら


ピンポーン


またインターホンが鳴る。


ピンポーン

ピンポーン

また、鳴る。


ピンポンピンポンピンポンピンポン


「だあああ!うるせえ!」

しびれを切らした諸星くんが、勢い良くドアを開けた。


「お、ビンゴ」

「せやから言うたやん」


ドアの前に立っていたのは、土屋さんと三井さん。



「お前ら…何しに来たんだよ」

諸星くんが聞く。すごく、嫌そうに。


「大チャン今日1日めっちゃウキウキしとったし、練習終わってダッシュで帰ったから怪しいな〜と思ってな?」

「これは咲季が来てんじゃねーかってことでよ、俺らも来た」


「咲季チャン久しぶりやね」

「よう、元気か?」


諸星くん越しに覗き込んで声をかけられる。


「あ、お久しぶりです」


「今日は大事な日だから帰れよ」


「え?何の日やの?」


「…今日は付き合って1年だから2人でお祝いすんだよ」


「お、そりゃめでてえな!よし!俺らも一緒に祝ってやる!」

「そんなのいらねえから帰れよ」

「大チャン冷たいわあ〜咲季チャン、俺らも一緒に、ええかな?」


「えっと…」

諸星くんは帰れって言ってるけど、せっかく来てもらったのに帰すのは申し訳ないよね…

「うん、大丈夫、だよ?」


「さすが咲季!お前良い女だな!」

「ほな、お邪魔します〜」


諸星くんは不服そうな顔をしていたけど、2人の押しに負けて、彼らを部屋に招き入れた。



「お!メシうまそー!さっきから良い匂いすると思ってたんだよな〜」

「これ咲季チャンが作ったん?」

「う、うん」


「これは俺らのメシだからお前らは食うなよ」

「かてぇこと言うなよ!俺らもちゃんと差し入れ持ってきたからよ」

三井さんがコンビニの袋を差し出す。


「そういう問題じゃねえんだよな…」

ボソボソとボヤく諸星くんをよそに、皆でテーブルを囲んだ。



土屋さんと三井さんに記念日を知られてしまったことで、毎年この日は彼らがやって来てドンチャン騒ぎになることを、私達はまだ知らない。

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