初恋cherry.(1〜32)
□5話
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もうすぐ夏休みが始まる。
夏休みは私にとって憂鬱でしかなかった。
だって諸星くんに会えないから。
会うっていっても一方的に見てるだけなんだけど……
諸星くんはバスケ部でインターハイに出るから、体育館に行ってもいないし、夏休みの課題はいっぱいあるし、とにかく暑いし…
「はあ〜憂鬱」
「ちょっと〜!そんなこと言わないの!」
うなだれる私に喝をいれるかのようにユッちゃんからデコピンを一発お見舞いされた。
「いてっ!うう、ユッちゃん…」
「私と遊べば良いでしょーが!」
「うん、そうだよね。いっぱい遊んでね」
「バイトがない日はね」
「夏祭り、一緒に行こうね」
「うん!浴衣着よう!」
大丈夫!私にはユッちゃんという大好きな親友がいるから寂しくないもんね!うん!寂しくない!うん!
「……寂しくないもん、ね…」
「あーもう!また暗くなったあ!」
「うわーん!やっぱり寂しいよ〜!」
ユッちゃんはこりゃダメだと呆れ顔。
「うーん……あっ!諸星くんに何か渡してみたら?インターハイ頑張って〜って」
「何かって?」
「何かよ何か!例えばお守りとかさ!」
「お守りかあ〜でも私なんかから受け取ってくれるかなあ?ファンの子からも色々もらうだろうし。そもそも渡す勇気がないよ…」
「そんなのわかんないけどさ、この間名前聞かれたんでしょ?興味ない人に名前なんて聞かないって!あと咲季は相当インパクトあったはずだし!なんたって体育館業者…ぶはっ!」
ユッちゃんが吹き出す。
まだこのネタ引きずるのね…
でも…良いかもしれない。
インターハイは広島だから遠くて応援に行けないし、でも諸星くんを応援したい気持ちは誰よりもあるから。
渡せるかどうかも、受け取ってもらえるかどうかもわからないけど……
「……ミサンガ、とか、どうかな?」
「いいじゃん!ミサンガ!咲季手先器用だし良いと思う!」
「…手芸屋さん、ついてきてくれる?」
「よしきた!早速今日行こ!バイト休みだし!」
頼りになる親友がいて、私は幸せだ者だ。