初恋cherry.(1〜32)
□2話
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諸星くんとはクラスが離れている。
私が2組で、諸星くんが10組。
せめて隣のクラスなら、せめて同じ階なら、すれ違ったり声が聞けたりするかもしれないのに。
同じ学年なのに遠すぎて、偶然見かける以外は何もない。
だから諸星くんの姿を拝むためにはバスケ部の練習を見に行くしかなくて。
でも同じ考えの人は私以外にも沢山居て、毎日放課後の体育館のギャラリーは女の子でいっぱいだ。
もちろん諸星くん目当てじゃない人もいるんだろうけど、ほとんどは諸星くんを見に来てるんだと思う。
諸星くんがボールを持つたび黄色い声が響いて、シュートが入ると悲鳴のような声が体育館をこだまする。
でも諸星くんはそんなギャラリーに見向きもせずに汗を流してプレーしていて……
そんなところがまた素敵で更に好きになっちゃうんだよね。
私は黙って彼のプレーを見る毎日。
声をかけるなんて到底できなくて、見ているだけで精一杯なんだ。
そして今日も諸星くんを見に体育館へ向かう。
ユッちゃんは試合のときは一緒に来てくれるけど、放課後の練習の見学は『バイトあるし』『興味ない』ってついて来てくれない。
サバサバしてるんだよね。
サッパリハッキリしてて、そこがユッちゃんの魅力なんだけど。
体育館に近づくと、いつもなら沢山いるはずの女の子たちが見当たらなくてやたらと静かだ。
私来るの早かったかな?なんて思いながら体育館へ足を踏み入れると、、誰もいない。
あれ?何で?
今日部活お休みなのかな?
誰もいない体育館を前に立ち尽くしていると後ろから声がした。
「今日は部活ないよ」
ビックリして振り向くと、立っていたのは………諸星くん。
「えっ」
「テスト1週間前だから、今日から部活禁止なんだよ」
諸星くんが、私に話しかけてる。私に。
そっか、テスト前だ。忘れてた。
どうしよう。何か言わなきゃ。でも声が出ない。
「俺を見に来たの?」
バレてる!!!!
何でわかるの!?
一気に顔が真っ赤に染まる。
どうしよう!何も言葉が出てこない!
「あれ?図星だった?」
固まっていた私の口からやっと出た言葉は、
「いえっ!あの!体育館!体育館を見に来たんです!異常ないみたいなんで、かか帰ります!では失礼します!」
ダッシュでその場を去った。
何言ってるの私!?!?!?
「ぶはっ!体育館て。おもしれー」