(Φ_ゝΦ)*(*бωб*)
□貴方に血を、僕に愛を。
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とある中世のお城。
僕はここスターリング城の王の次男。
次男だから世継ぎになることもなく、特種な教育を受けるでもなく…。平穏(でもないけど兄さんに比べたらそうだと思う)な暮らしをしていた。
とにかく暇な毎日で。テラスで庭の様子を眺めるだけで一日が終わることだってある。ちなみにその時は冬だったってこともあって次の日風邪をひいて兄さんに怒られちゃったんだけどね。
「テミン様。いかがされましたか?」
「えっ…?」
「私が入れた紅茶、お気に召しませんでしたか…?」
僕を不安気に見つめるこの執事さんは、ユノヒョン。17歳の僕とは7歳離れた24歳。すごく尊敬できる気さくな人。切れ長の目にシャープな顎、180センチを超えた長身に抜群のスタイル。口の出しようがない程、完璧な人だ。宮廷に仕える女の子達の中でも人気だとか。
「ううんっ、違くてね…。ちょっと考え事してたの。」
「左様でございますか。それではテミン様。気分転換など、いかがでしょうか?」
「気分転換…?」
はい。とユノヒョンはクローゼットを開けて僕の着替えを出した。数ある僕の服の中でも地味な服を選んだユノヒョンは僕の服に手をかけた。着替えくらい1人でできるのに、ユノヒョンはいつも手伝うんだ。ちょっと恥ずかしい。
ユノヒョンに比べて薄っぺらい胸板と腰…割れてない腹筋は運動なんてろくにしてないから仕方ない。
「よし。それでは出かけましょうか。」
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ユノヒョンに連れられて久しぶりに来た街。相変わらず賑やかで楽しげだ。
「うわぁ。久しぶりだなぁ。ユノヒョンはいつも来てたの?」
「はい、時々。ですが最後に来たのはもう五日前になります。」
「ねえ。久しぶりに…、ヒチョルヒョン達に会いに行かない…?」
僕が言うとユノヒョンはにこっと微笑んだ。ヒチョルヒョンとは、街に住む鍛冶屋の三人息子の長男。次男はジョンヒョニヒョンで、三男がキボミヒョン。ジョンヒョニヒョンは街の娘とよく遊んでいるらしい。キボミヒョンはお母さんのいない一家の家事仕事。長男であるヒチョルヒョンは鍛治の手伝いをしている。(これ全部ユノヒョン情報。) 懐かしい彼らの家に着いて、扉をノックする。すると、特徴のあるキボミヒョンの声が聞こえてきた。
がちゃ、と目の前の扉が開いた。中から顔をのぞかせたキボミヒョンは僕らを見て一瞬きょとんとして、すぐに笑顔になった。
「テミナぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「うわぁっ、キボミヒョンっ。」
いきなり僕に抱きつくヒョン。ふらついた僕を支えてくれたのはユノヒョン。
「本当久しぶり!!その可愛い赤ちゃんみたいな顔、全然変わってないねー!!可愛すぎて一瞬女の子かと思っちゃったよー!!」
「えへへ。複雑だけどありがとう。」
僕がにこっと笑うと、キボミヒョンがまた僕の名前を叫んで抱きしめてきた。すると家の奥の方から少しハスキーなとこが素敵なヒチョルヒョンの声が「キボマーー!!!うるせーぞー。」と聞こえて来た。
「ヒョンーテミナが来たよー!!」
すると奥から聞こえていたガチャガチャという音がパッと止んで、今度はものすごい足音が聞こえてきた。
「おい、テミナか!?」
「ヒチョリヒョン…^ ^*」
優しく抱きしめてくれるヒョンに僕は応えた。ヒョンの香りがして懐かしく、心地いい。
「お前変わらず俺に似て綺麗な顔してんなー。」
「えへへ。ヒョンも変わらず綺麗ですっ。」
「おう、当たり前だよ。」
「あれ、ヒチョリヒョン。ジョンヒョンは?」
僕らを見守っていたユノヒョンがきょろきょろしてヒチョリヒョンに尋ねた。
「あいつはまた、デートじゃねえか?」
「でえと?」
「女の子といるんだよ。夕方になれば帰ってくるよ。おやつあるから、待ってる?」
「うんっ。」
ユノヒョンによるとキボミヒョンはお料理がとっても上手らしい。とくに彼が作るおやつは絶品だとか。僕もそれが食べてみたかったんだ。