BlueSky

□1話
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パラレルside


事の発端はこうだ。



「そういえば、貴方部活に入ってませんよね?」



腰までの長い艶やかな髪を揺らして、少女…風見咲夜は目の前の人間にふいに思い立った疑問を投げ掛けた。

彼女は春鈴高校の二年生。

秀才とはいかないが、勉強も運動の両方共平均より上の成績を持つ。

日本人らしい長い黒髪に普通よりは整った容姿の彼女は、端から見れば可憐といったイメージにとらえられるだろう。



「言われてみればそうだね」



私の机にもたれ掛かり、その燃えるような紅い瞳を向ける彼…藤原蓮。

驚くほど整った容姿にほんの一瞬だけドキリと胸が高鳴ってしまうが、悪魔でほんの一瞬だけだ。

窓から入り込む爽やかな風で彼の髪が微かに靡く。

ただ、机にもたれ掛かって視線を私に向けるだけの、そんな姿でさえ様になっているのが憎い。



「部活、入らないんですか?」

「んー…まぁ、面倒だからね。入りたいとは思わないよ」

「そう言わずに入ってみたらどうですか?案外と楽しいものですよ」



首を傾げて提案してみる。

我ながらおせっかいなのでは?とも考えたが、部活に入らないなんて学校生活を損していると思う。

まぁ…人それぞれ、ですけど。



「そう言う君はどういう部活に入ってるの?」

「私は茶道ですよ」

「へぇ…じゃあ俺もそれに入ろうかな?」



また、そういうことを言う…。

と、毎度毎度本気なんだか冗談だかわからない事を淡々と言ってのける彼に、私は飽きれ半分にため息をついた。

彼はというと私の反応にどこか満足気な顔をして、相変わらず紅い双眼を向けるだけ。



「勘弁してください。貴方が来たら部活になりませんよ」



そうです。

彼が来たら部活になんかろくに集中できません。特に女子が。

ただでさえ茶道部には女子の人数の方が多いのですから、彼が来たら部活どころじゃありませんよ。



「冗談だよ。でも、見学には行ってみたいな」

「…また、どうして?」

「君がどんな風にやってるのか見てみたくてね」

「…だから。そういうのは私以外の女子に言ってあげてください」



ふい、と視線を反らす私が言っては効果を成さないかもしれない。

でも、そうするしかない。

こうでもしなければ、彼の言葉に流されるだけだから。

きっと、彼は私の反応を面白がってるだけだ。



「そうですね…。私も手伝うのでいくつか部活を見学してみてみませんか?」

「いいよ。君が教えてくれるなら喜んで」

「いい加減にしないと、本当に怒りますよ」



これが、全ての始まり。

恐らくこの時点で“有り得ない事”が始まろうとしていたのだろう。

私達は何も知らないまま、教室を後にした。


夜月
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