ユニコーンの恋(題名仮)

□第三章
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帝人を朝一番に見つけよう。
そう決めていたのに、
そう決めていたのに、

「マンガかっっ!?」

センカは寝坊した。静雄並みの脚力で矢の如く速く走っている。残像が見えるくらいだ、安全運転の自動車のスピードを越していることに違いない。
だが、絶対に遅刻だ。
(昨日寝るのが遅かった!)
静雄とだらだら帰った為に、就寝時間はなんと午前2時。
(いや、私が図工紛いな物体を作ったから寝るの遅くなったんだけどね?)
帰ってきたのは夜の10時30分。それから彼女は汗水垂らして1つの部品を完成させた。
いや、その、ネタバレになるので伏せておこう。

「もう一限始まってるし!」

時計は9時を差している。やっとの思いで校門につくと、そこにはセルティがいた。

『センカちゃん! もう授業始まっているぞ!』

先生のような事を言う、都市伝説。

「いや、セルティさんもう張り込みですか?」
『今来たばかりだ』
「私も今来たばかりです」
『見れば分かる!』

セルティに背中を押され、その前にシューターへ拘束したことを謝って彼女は校門を潜った。


「入ったばかりで遅刻とは良い度胸だ」
「いや、本当にすいません」
「中国では遅刻が当たり前か? ん?」
「まあどの国も日本よりルーズですよ。遅刻はいけませんけどね」

(中国の学校なんて知らねっつの)
真面目に答えるなと頭を叩かれ、センカは席に座る。


とは言ったものの、今日は授業らしい授業をしなかった。彼女の記憶に残っているのは遅刻を茶化されたことくらいだ。
そして今、彼女は風紀委員として席に座っている。委員どうしの顔合わせだ。今の今まで何故か帝人と会えなかった。
(放課後とっくに過ぎてるんだけど?)
正臣とA組の葛原君が揉めている。それを彼女は遠い目で見ていた。

「小火器ならいいのか!」
「いいんだ!」

とりあえず、正臣以外全員一致で小火器の持ち込みはなしとなった。

「あとは不要物の持ち込みと、制服についてです。特に女子のスカート、長さについてもう少し規定を緩くしてほしいとの意見が多数寄せられています」
「スカートは膝下にするべきです!」

葛原君が言った。それに対して正臣も反論する。

「いやー葛原君、本当に分かってないな。いいか、膝上15pだ。あんまり短くすると布になるんだよ。俺はもちろん女性は裸が一番美しいと思うけどな! 裸でいいじゃん!」

正臣は裸を唱える。葛原君は顔を赤く染めた。

「猥褻だ!」
「ほら、女性の一番の化粧は笑顔と言うように綺麗なのは裸だ! 世間はもっと羽目を外さなきゃ駄目だ!」
「不法地帯になるよねー。よし、間をとって10pで」

センカがやむを得ず打ち切る。

「というか、不要物に″革手袋″って書いてあるけどなんで?」
「君は今日、革手袋を磨いたら遅刻したと言った。風紀委員が風紀を乱してどうする!」
「風紀は乱すものだろう!」
「紀田くんは少し黙ろうか」

センカは葛原と対峙する。この男を丸めこまないと先の学園生活が危ぶまれる。

「私の革手袋はただの革手袋じゃない。私を外敵から守ってくれているんだ。デートもする。あんたは私のダーリンを不要物と言うのか?」
「この子、頭おかしいの?」
「ほーぉ、言ったな。いいもん小火器持ち込みに賛成してやる。異議は認めない」
「よっしゃあ! ナイス」
「子供かお前ら!」

こうして時は過ぎていく。結局会議が終わったのは帝人がセルティ、臨也と出会い覚醒した後であった。
会議で革手袋の持ち込みを許可された。但し小火器の持ち込みは不可となった。

「これから俺は美女とリスキーなパラダイスを楽しむわけだが、センカも来る? 俺と一緒なら天国まで行けるよ」

委員会で一致団結した正臣は彼女を名前で呼ぶようになった。

「ははは。生憎私は今日も予定が入っていてね。今度ゲーセンでも行こう。日本のゲームはやったことがない」
「お、じゃあ決まりだな。俺は世界中の美女を虜にしないとだからもう退散するぜ。じゃあな!」
「ボインだったら竜ヶ峰くんにも紹介してやりなよ」

彼は手をひらひらと振り、分かれ道を歩く。
センカは彼を見送ると、昨晩作った図工紛いの物体を取り出した。

「さて、私もリスキーなパラダイスを楽しむとするか」

物体を手で弄びながら、彼女は駅の方角へ足を運んだ。
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