短編

□隣の彼女
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俺の隣の席の笹山さんは、写真部だ。



俺は二年になり、彼女と同じクラスになった。

だが、俺は一年の頃から彼女の存在を知っていた。

一年の夏、俺は彼女と出会った。


あの日は、雲一つない快晴で、とても暑い日だった










土曜日、

ここ、青道高校野球部では当たり前のように練習が行われている。

三年生の最後の大会、夏大がまじかに迫った今、部員たちの気迫は凄く、どこか張り詰めている。

だが猛暑日の今日、部員達の声はいつもより出ていないように感じる。

「(この暑さじゃ、こまめに休憩して水分補給しねーと熱中症の奴が出そうだな)」

だが、気を抜く訳にはいかない

ここ数年、青道は稲実、市大三高に甲子園出場権を独占されている。


『甲子園に行きたい』

みんな、その夢を叶えるために日々努力している。だから、絶対に甲子園に行きたい。




「十分休憩!!」

「「「はい!!!!!」」」

休憩の時間になり、俺は顔を洗うために水道へと向かった。


「ふぅ・・・」

暑さで火照った顔に水の冷たさが気持ちいい。

さて帰ろう。そう思った時声が聞こえた


「あ、ちょ、こら!動くな」

どこからともなく聞こえた声は、女の子のものだった。

しかし、辺りを見回しても女の子はいない

気のせいだと思い上を向くと、


「・・・・は?」


いたんだ、そこに


「そうそう!いいねぇそのアングル!!」

木の上に。彼女は木の上で巣にいる小鳥の写真をとっていた


「ちょ、あぶな・・・・」

そこまでいいかけてやめた。

だって彼女は笑っていたから。たのしそうに、どこまでも真っ直ぐに、輝いていた。


「・・・・綺麗だ」

言葉は無意識に出ていた。

この瞬間、俺は彼女に見惚れていたんだ。


















そして現在。

その時の彼女、笹山 真夏は俺の隣の席に座っている。

席が隣になってしばらくたつのに俺はいまだに笹山さんとは一度も会話をした事がない。

話かけたいけれど、案外俺はヘタレだったらしい。

また、あの時の笑顔が見たい。

だから俺は、


「やべ、教科書わすれちまった。」

こんな嘘をはいてしまったんだ


「ごめん、笹山さん教科書見せてもらってもいい?」

「え」

はは、間抜けな顔してる。

無理もないだろう。今まで話したこともない奴にいきなり言われたんだから。

でも、もうこんな驚いた顔を見るのもなくなるだろう。

何故かって?

笹山にどんどん話しかけるつもりだからだ。


「ページめくっていい?」

「あ、はい。どうぞ」

















隣の彼女


今日も俺は、絶賛彼女に片思い中

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