魔法少女リリカルなのは〜蒼き騎士王列伝〜
□〜第五話 幾星霜の理想郷〜
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〜エルトリア・グランツ研究所〜
アリサが初めて違法研究所襲撃を行って数日後、グランツ研究所の仮想空間訓練所では……
アリサ「はぁ……はぁ……」
ナハト「…………」
膝を突いて肩で息をしているアリサとそれを見下ろすナハトがいた。
ディアーチェ「容赦ないな。」
レヴィ「ナハトって結構スパルタだからねぇ。」
シュテル「しかし、アリサの剣裁き、きれが無いですね。……まぁ、理由は分かりますが。」
すずか「アリサちゃん……」
アリサはあの日以来、過度な訓練と違法研究所襲撃を行い続けていた。すずかはそれを心配して止めようとしたのだが、その前にナハトがアリサに模擬戦を申し込んできたのだ。
ナハト「これで終わりか?」
アリサ「まだまだ!」
アリサはフレイムアイズでナハトに切りかかるが、ナハトは左手のシュヴァルツェ・ナハトでそれを受けると右手の裏拳でアリサを殴り飛ばした。
アリサ「かはっ!?」
ナハト「……怒りに駆られ、剣を鈍らせるな、集中しろ…油断したら怪我ではすまんぞ……」
アリサ「はぁ、はぁ……あんたに…言われなくたって……そんなこと……!!」
ナハト「アリサ、俺は相手が子供だろうと女だろうと敵ならば容赦はしない…………強くなれ、憎しみにとらわれないように……」
アリサ「え?」
アリサはナハトの言葉に呆気に取られる。
ナハト「アリサ……お前はやはりどこかで憎しみを捨て切れていない。人の心は簡単に割り切れるほど単純ではない……それはいい……憎しみを捨てろとは言わない。それは大切なもの、失ったものがどれだけ大きかったかという証だ……だが憎しみにとらわれるな……そのために強くなれ……心も……身体も……己のうちにある憎しみすらも飲み込むほどに強くなれ…………そして決して俺のようにはなるな……憎しみのあまり復讐に取り付かれたかつての俺のような弱者にはなるな……」
アリサ「ナハト……」
ナハト「これ以上言葉にする必要はないな……来い!!」
アリサ「……えぇ!!」
そして、アリサとナハトは再びぶつかり合った。
それからしばらくして、ナハトは見物していた他のメンバーの所に戻ってきていた。一方のアリサは気絶している。
シュテル「やはりアリサではまだ勝てませんか。」
ナハト「当たり前だ、『今』はまだ負けん……もっとも……俺も鍛え続けないと何年後かに抜かれるかもしれないな……全く、油断できん……」
そう言うナハトの視線の先には、アリサが気絶しながらもどこか迷いの晴れたような穏やかな表情を浮かべていたのであった。