D灰長編
□マテールの亡霊
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「・・・ろ、おき・・・おきろ!」
「・・・ぁ、」
肩を揺らされる。地面がぐらぐらと揺れる。
怖い・・・。
また?また私、ここに戻ってきたの?
「起きろ!!」
「やぁぁぁ、やめ!!」
頭を手で守る。目をギュッとつぶった。
泣くもんか、泣くもんか。
薄く目を開くと、目の前に戸惑った顔の神田さんがいた。
「原田、大丈夫か?」
「・・・え、あ。大丈夫です・・・。」
神田さんの綺麗な目にいとめられる。
いつも眉を寄せていたりして気づかないけど、この人の目って、すごい綺麗な色をしているんだな。
「行くぞ、」
「あ、はい。」
神田さんはさっさと行ってしまう。
私は急いでその背中を追いかけた。
部屋の外に出て、急いでマテールの亡霊のもとに向かう。
この瞬間にもいろんな人が死んでいるのだから、急がないと・・・。
「マテールの亡霊は、人形なんて・・・。」
「イノセンスだから、な。なんでもありだ。」
トマさんが舌打ちをする。
え、そんなキャラだったんですか。
「無線がつながらなかった・・・全滅か・・・。」
悔しさが滲みだしている。全滅という言葉の意味の重さに息をのむ。
たくさんの人が死んだ。生きれなかった。
神田さんがアレンさんのほうをじろっと睨みつけた。
「モヤシ・・・始まる前に言っとく。お前が、敵に殺されそうになっても、任務遂行の邪魔だと判断したら・・・俺は、お前を見殺しにするぜ。戦争に犠牲は当然だからな・・・変な仲間意識は持つなよ」
「嫌な言い方ですね。」
「あと、お前。」
「はい!?私・・・?」
役立ちそうなアレンさん(多分、とりあえず足は速いし)をあれだけ滅多打ちにしたんだから、私なんて何言われるか分かんないよね。
とりあえず、帰れって言われるのは嫌だな、って思った。
「お前が死んだら、俺がリナリーに殺される。絶対死ぬなよ。」
「なんですか、それ!?」
なんだか、とってもアレンさんが可哀想になった瞬間だった。