Heresy Doll

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その後、古高が捕まったことで

今夜会合が行なわれる可能性がある、と土方さんが広間で言った


早急に会津藩と軍を整えることになる


「山崎、島田。お前らは会合の場所を探ってくれ

・・・・・・まあ大体検討は着いてるがな

てめえらも出動準備をしておけ」

「『了解』」


そうしてその場はお開きになると思ったら、

「それから、」と土方さんは私を見た


「神崎、お前は残れ」

『!!な、なんで・・・!』

「会津のお偉方に、お前の存在を知られちゃまずいだろう、だからだ」

『・・・っ・・・そんな・・・』


それだけ言うと、土方さんは広間を出て行き、

私はその場に立ち尽くした






会合の場所が、四国屋と池田屋に絞られ、皆出発の準備で慌しくなった

私はそれを自分の部屋から眺めている

すると、後ろから声を掛けられた


「神崎!」

『・・・なんだ、清川さんか』

「俺で悪かったな!・・・嫌だろうけど、今日のところは我慢しとけよ・・・出陣」

『わーってるよ、バーロー』

「・・・ば、ばあろお?」

『バカ野郎、っつー意味!早く行って来いどアホ!』

「な、なんだよそれ!・・・まあ、行ってくるよ」


三番組で一番仲のいい清川さん

この人がいたから、今三番組にいられるようなものだ

笑顔でその姿を見送ると、今度は組長様が後ろに立っていた


『斉藤さん?』

「・・・・・・すまない、お前は三番組の隊士だというのに」

『・・・いいんですよ、そのことは気にしてません

私は・・・・・・異端者、ですから』


そう言って笑うと、斉藤さんは顔を顰めて黙ってしまった

え、なんで?


「・・・あんたは異端者ではない

列記とした新選組の隊士であり、俺の部下だ」


『!!』

「・・・・・・今日は大人しく、我々が帰るのを待っていてくれ」

『・・・・・・・・・・・・はい、・・・ご武運を』


斉藤さんは満足げに去っていく

それを見て、私にも出来ることを考えてみた


『・・・・・・そうだ、』


今まで幾度となく思っていたことを、実行に移すことにした


辺りの喧騒は、もうない










広間に行くとそこには、千鶴と山南さんがいた

静かに山南さんの前に行き、そこに座る


『・・・千鶴、ちょっと外してもらえる?』

「あ、・・・・・・うん」


千鶴に席を外してもらい、

足音が聞こえなくなったところで声を掛けた


『・・・山南さん、』

「なんでしょうか、神崎くん?」

『・・・・・・その腕が治る、と言ったら、あなたはどうしますか?』

「!!」


目の色を変える山南さんを見据え、話を続ける


『まだ皆さんには言っていませんが、私は人の傷を治すことが出来ます

傷が、致死のものでなければ』

「・・・・・・この腕は、治るんですか・・・?」

『・・・正直、わかりません

怪我の後遺症は、治したことがないので・・・。

ですが、恐らく治ります、・・・・・・いえ、治します』


「・・・君に反動などは起こるんですか?」

『いいえ、使いすぎなければ何でもありません』

「・・・・・・そうですか・・・」



目を伏せ迷っているのか、考え込んだ山南さん

すると広間の戸が開き、山崎さんが入って来た



「・・・総長、本命は池田屋です」

「・・・・・・どうやら、我々は賭け事に弱いようだ

山崎くん、四国屋にいる土方くんたちに伝令を」

「御意」

「ああ、それから・・・神崎くんと雪村くんも連れてください」


その言葉に動揺するが、もし山崎さんが屯所襲撃の浪士に

足止めを食らってしまったら、と考えて意味がわかった


山崎さんは納得したようで、頷く


「総長命令、しかと承りました」

「神崎くん、雪村くんを呼んできなさい

・・・・・・お話は、また今度」


『わかりました』


そうして、千鶴を連れて四国屋に向かって走り出した













番狂わせのメーデー


(走って走って、)(振り向かずに)

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