Heresy Doll

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「一くん、そっち!」

「・・・・・・わかっている。だが目に見えたからと言って、

捕らえられるかは別の話だ・・・っ神崎、行ったぞ!」

『はいよー・・・ほああっ!に、逃げられた、だと・・・っ!』



屯所内を走り回り、組長2名と隊士1名が追いかけているのは・・・1匹の猫


「下手な言い訳してないで、もっと気合入れて走ろうよ!」

「な、何やってるんです?こんなところで―――わっ!?」

『や、山崎くん、大丈夫か!?』

「人の心配してないで、早くあいつを捕まえてくれ!」


何故こんなことになったかというと、ことの始まりは昼の準備中の勝手場から




今日の昼当番は新八さんと原田さん

それを私は手伝っていたのだが


『・・・ん?なんか、猫の鳴き声が・・・・・・ってわ!』

「なんだ・・・うおおお!?」

「ちょ、おいお前・・・っ!」

「にゃーんっ」



突如として現れた猫に、勝手場の釜や鍋をひっくり返し

中のご飯もめちゃめちゃに散乱させてしまったのだ

それはもう大惨事になるくらい



そうして、現在のように他の人も加わり、猫を捕縛しようとしているのだが



『・・・っくっそ・・・あんの猫・・・っ・・・』



私の能力を掻い潜り、俊敏に走り回る猫に皆振り回されている

丁度千鶴がその現場を目撃し、それを見た幹部と私は部屋を借りて作戦会議を立てることになった




「・・・・・・この件は内密に済ますべきだ

副長が余計な心労を感じないよう、俺たちで内々に始末をつけよう」

「ちなみに土方さんって、今どちらに・・・・・・?」

「土方さんはまだ広間だな

近藤さんと山南さんと3人で、なんか会議してるらしいぜ」



・・・・・・そんな会議で神経を尖らせているときに邪魔をして、

果たして私たちは生きていられるのだろうか


なんとなく悪寒がする中、そんなことをふと思った



『・・・・・・とりあえず、穏便に済ませるなら私も協力しますよ

・・・・・・・・・あの猫、叩き潰してミンチにしてやる』


ミンチ、という言葉はきっとわかっていない

が、ボソッとそれを口にすると、周りの温度が急激に下がったような気がした



そうして割り振られた役割を皆遂行しようと、部屋を出て行く

私は斉藤さんと沖田さんとで、猫の捕縛をすることになった




『・・・・・・いません、ね・・・』

「・・・・・・・・・君の能力で何とかできないの?」

『無理です』

「・・・・・・しかし、こうも見つからないとなかなか難儀だな・・・」


猫の気配はせず、ただ静かに足音だけが響く

すると、じゃり、という音と共にお目当ての鳴き声が聞こえてきた


「にゃー・・・」

「『・・・・・・・・・・・・』」

「・・・・・・にゃあー・・・」

『・・・・・・いたァァァァァ!』

「「びくっ」」



数m先の木の上で鳴く猫を発見し、叫ぶと隣の二人が肩を揺らした

ここであったが百年目、ではないが、捕まえに行こうと転送しようとする

すると、ミシッという音がした



『え、』

「・・・あ、枝が」

『・・・・・・!』



猫の乗っている枝が根元から折れ、重力に従って落ちていく

地面から相当離れていたため、あのまま落下すれば怪我は免れないだろう

咄嗟の判断で猫が落下している横に空間移動し、抱きかかえてまた空間移動した



『・・・・・・・・・は、・・・あー・・・・・・』

「・・・煉ちゃん・・・・・・」

『・・・・・・間に合った、です・・・ふう・・・というわけで』

「・・・・・・神崎?・・・・・・、!!」

『・・・・・・・・・どうしてやろうか・・・なー?猫僧(ねこぞう)』



その時間、猫の悲痛な鳴き声が屯所内に響いた


















束の間のアリエッタ


(休息には、)(丁度いい)

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