Heresy Doll

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文久4年 1月



寒さが厳しさを増していく月

私と千鶴は窮屈な生活の中で、少しずつ慣れてきた

千鶴は男装を続けなければならず、私以上に大変な思いをしているが

日々の暮らしで親交が深まっていった




「・・・・・・こうも静かだと、気が滅入っちゃうね」

『・・・・・・・・・確かにそうだなー・・・千鶴は部屋から出られないしね』

「あー・・・・・・早く父様探しに行きたいんだけど・・・」


そんな独り言を行った瞬間、部屋の外から声がかかった

そういえば、部屋には沖田さんが監視についていたはず



「それは、君の心がけ次第だと思うよ」

「・・・え!?」

『・・・・・・あり、千鶴気づいてなかった?』

「全然・・・・・・!煉ちゃん、知ってたなら言ってよ・・・!」

『・・・・・・あはは』



沖田さんに愚痴を聞かれていたからか、真っ赤になって私を見る千鶴

え、何この可愛いやつ


そう思っていると、今度は我らが組長様の声がかかった


「・・・・・・夕食の仕度が出来ているのだが、そろそろいいだろうか」

「・・・!!」

『・・・・・・斉藤さん、気配ありませんでしたけど』


私を見ると静かに頷いた斉藤さん

なんで頷くんですか?

とりあえずそこは置いておくことにする


どうやら斉藤さんも千鶴の愚痴を聞いていたらしく、千鶴はあきらめたようにうなだれた

そこに平助も呼びに来て、千鶴の監視も含め一緒に夕餉を取ることになる






「いただきます」

「しかし、今日も相変わらずせこい晩飯だなー・・・・・・、

というわけで。隣の晩御飯、突撃だ!弱肉強食の時代、俺様がいただくぜ!」

「あぁっちょ新八っつぁん!なんで俺のおかずばっか狙うかな!」

「ふはははははは!それは体の大きさが違うからだ!」

「・・・っじゃあ俺もでかくなるために沢山食わねえとなー!」



騒がしさが心地いい夕飯の時間

主に騒がしいのは平助と新八さんで、それは見てるこちらも楽しいものだった



「騒がしくてすまないな」

「・・・・・・今までの状況を見て、慣れました」

「・・・・・・慣れとは恐ろしいものだな、・・・このおかず、俺がいただく」

『え、ちょ豆腐!私の豆腐!』



何気に加わっている斉藤さんに驚きながら、自分も参加しようとおかずに手を伸ばした時

スーッと襖が開いて、井上さんが出てきた

なにやら、深刻な顔をしている



「ちょっといいかい、皆」

「・・・?」

「大阪にいる土方さんから報せが届いたんだが、・・・・・・山南さんが、隊務中に重症を負ったらしい」

「「!!」」


それは、総長である山南さんの不幸な報せだった

命に別状はないが、二度と刀を振るうことは出来ないらしい

井上さんがそう言って広間を抜け、重苦しい室内

すると、沖田さんがポツリと言葉を発した



「・・・いざとなれば、薬でも何でも使ってもらうしかないですね」



その言葉に、私は肝が冷えていくのを感じた

この先は聞いてはならない、呪いの言葉だと

しかし、私と千鶴の存在を忘れているのか、新八さんがその話に乗った


「滅多なことを言うもんじゃねえ

・・・・・・・・・幹部が"新撰組"入りしてどうすんだよ」

「・・・?山南さんは、新選組の総長なんじゃないんですか?」

「え、あ、いや・・・・・・」


千鶴が声を掛けたことにより、新八さんは気づいたようだが

その質問に平助が答えようとしてしまった



「違う違う!"新選組"ってのは、新しく選ぶ組、って書くだろ?

俺たちの言ってる"新撰組"ってのは・・・・・・」

「平助っ!!」


原田さんが平助の言葉をさえぎって叫ぶのと同時に、

私は鉄針を数本、平助の足元に転送した



「へ、わ、えっ・・・!?」

『・・・・・・それは、私たちに聞かせられること?』

「・・・・・・・・・あ、・・・わりい」



ばつが悪そうに謝った平助は、視線をそらした

次いで新八さんに言われた言葉は、

私と千鶴にとって、残酷なこと


「・・・・・・二人ともよ、今の話は・・・聞かせられるギリギリのところだ

・・・・・・・・・気になるだろうが、何も聞かないで欲しい」

「・・・っでも・・・」

『・・・・・・・・・』



「・・・平助のいう"新撰組"っていうのは、・・・・・・可哀相な子達のことだよ」


沈黙の中のその言葉は、酷く頭に残った















聞こえてくる鎮魂歌


(その先は、)(聞いてはいけない)

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