Heresy Doll

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あの尋問から約2週間が経った


私の状況は変わらず、屯所で静かにしている

ただこの2週間で分かったことといえば、


「おーい、煉!ちょっと手伝ってくれ!」

『今行く!』


新選組は思ったよりもいいやつらばかりだ、ということ


平助は隊士とする、と仰せつかった日からよくしてもらっている

藤堂さん、と呼んでいたが、虫唾が走るから、という理由で名前呼びになったり

剣術の稽古の相手になってもらったり、相手になったり

とにかく、この短時間でとても仲がよくなった



「・・・神崎」

『あ、斉藤さん・・・これからですか?』

「ああ、行くぞ」


そして今日は、配属となる3番組に挨拶をする日だ


何故3番組になったのかは分からないが、

土方さんいわく、斉藤に任せたら何も心配は要らない、らしい




「・・・3番組の者は集まってくれ」

「「はい!」」

『・・・・・・わお』


斉藤さんの一声で集まった隊士たちは、私と斉藤さんを見つめて少しも動かない


どんだけ忠実な部下をお持ちですか

確かにこれは心配要らないわ


「先日話に出ていた、新しい隊士だ」

『・・・神崎煉です、ご覧の通り女ですが、足を引っ張らぬよう全力を尽くします』

「「よろしくお願いします!」」


息の合った返事でそういうと、斉藤さんは私に顔を向けた


「・・・今日からあんたも稽古に参加しろ、隊士たちとも話などしておけ」

『わかりました』


隊士の方々と会うのはもちろん初めて

3番組の人はこっちですよ、と声を掛けてくれたが、

他の組の人の視線が集中していてやりにくい


すると、3番組の隊士の一人が声をかけてきた


「・・・・・・すごい視線ですね」

『はい・・・すみません、私が入ってきたから』

「いえ!あ、俺清川誠一っていいます」

『・・・よろしくお願いします』


それから数時間稽古に及んだが、誰一人として私に勝つものはいなかった








夕方、誰もいない道場で黙々と竹刀を振るう

ブォン、という音と、床の軋む音が心地よく、また面白くあった

何も考えず無心に振っていると、少しの不安も断ち切れた



『・・・っ・・・・・・ふー・・・・・・、?』

「・・・、すまない、気が散ったか?」

『斉藤さん、・・・いえ、もうやめるつもりだったんで』

「そうか・・・」



元々斉藤さんは寡黙な方だ、会話が続かず少し沈黙が痛い

そういえば、と話題を見つけ話しかけてみる


『・・・私って、斉藤さんに似ているんですかね?』

「・・・・・・・・・随分唐突だな、何故?」


平助にこの前言われたのだ、お前は一くんに似てる、と

そう答えると、斉藤さんは考える素振りをみせた


「・・・表情的なことなら、確かにお互い無表情だな」

『・・・・・・え、私笑ってません?』

「ああ、特に変化は見られん・・・変えているつもりだったのか?」

『・・・・・・絶対変わってると思ってました』



自分の表情が変わっていないことに気づかないなんて、一生の不覚だ

え、だから皆近寄らなかった・・・・・・とか?

それはないだろう、やつらは能力の位で物事を考えていたから



『・・・・・・ここは、平和ですね』

「・・・?お前の町は平和ではなかったのか?」


だって、戦争やってますもん、といいかけて止める

そうだ、ここでは"特殊な能力を持った一族"を演じているんだ


『・・・そうですねー・・・・・・争いは、絶えなかったかもしれません

いつもいつも、敵味方分かれて争って・・・・・・そんなことで、って思うこともありましたし』

「・・・・・・」

『・・・・・・・・・いつか、和解できる日が来ると思ってたんだけどなー・・・』



これはきっと私の本心だ

元の世界は戦争をしている、私は17歳で戦闘員に指名された

日本国は確かに大事だ、でも、そんなに争って何になる、と思うこともあった

私はこの世界に来てしまって、もう、日本国と他の国々が和解するところなんて見られない

そう思うと、急に寂しくなってしまった



『・・・・・・なんで人は、争うんですかね』

「・・・・・・・・・それが、人間の我侭な所だ

誰かを蹴落としてでも手に入れたいものがあれば、何でも出来る」

『・・・・・・そんなの、・・・おかしいですよね・・・』

「神崎・・・・・・?」

『・・・っあー、すみません・・・変なこと言いました』

「・・・・・・・・・・」



もうそろそろ斉藤さんも、私の言っていることの矛盾に気が付いてしまうだろう

だから早めに切り上げようと、竹刀を片付けに行く



『・・・・・・ま、そんなこと言っても結局、・・・私も、沢山の人と争って、・・・殺しましたけど、ね』


自嘲気味にそういうと、斉藤さんは相変わらず感情の読めない顔で私を見ていた


「・・・・・・お前は、何を隠している」

『・・・あなた方が知る必要のないこと、ですかね』

「・・・・・・・・・何故、あんたは、」

「おーい!一くん、煉!・・・飯だぞ!・・・ってなんだよ、空気が重いんですけど」

『・・・・・・はあ・・・平助、いっぺん土に帰ってろよ』

「なんで!?」


平助が夕餉の時間を知らせに来て、話は終わりにしなければならなくなった

平助に引っ張られ、斉藤さんを道場に残して大広間に行く

だから、その時斉藤さんが口にしていた言葉が聞こえることはなかった



「・・・・・・何故、あんな冷めた目で刀を振る・・・」



















ループする感情論


(話せば天国?)(それとも地獄?)

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