白紙物語

□さん
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いつものような、ありきたりな告白だった


《ずっと好きでした》


その言葉を、俺はいつも断っている


今日は、聞いてもらえるだけでよかった、といわれたが

本心でないことは丸分かりだった


気づかないフリをして、屋上を出る


そして思わぬ客がそこに佇んでいた

確かクラスで浮いていた、隣の席の少女


聞かれたのか、と思った瞬間、彼女の手を掴み階段を駆け下りていた


辿り着いたのは、俺のクラス


先ほどの告白を女子に聞かれた、となると

言わなければいけないことは唯一つ、『忘れさせる』


「・・・・・・・・・お前は、」


言い出した途端、女子からは俺のフルネームがつむぎだされた

・・・・・・こんな声をしていたのか、と暢気に考える


手を離せ、の言葉に謝り、掴んでいたものを離した


手短に頼む、ということで俺は単刀直入に忘れろ、という


そこから沈黙が続いた


・・・・・・やはり、言葉だけではダメだったか


本意ではないが、交換条件を出すことにする

が、それは思いもよらぬ方向へ進んでいく


『・・・・・・何を勘違いしているんだ?』

「・・・?」

『それは私の利益にならない。利益にならないことはしない。

ただ何もするな、と命令すればいいだろう』


「・・・・・・・・・命令、か?」

『そうだ』


正直、本当に驚いた


目の前の女子は、俺の申し出を"利益にならない"と足蹴にしたのだ

この学校で俺は、不本意ではあるが人気がある

ただテニスをしているだけなのに、

女子たちはアイドルを見るかのように黄色い声で騒ぐ


全校の女子が、とは言わないが、ほとんどその部類に入るのだろう


そして、そんな女子じゃなくも、俺が自ら"かなえられることを叶える"と言ったら

ジュースをおごれ、など、とにかく何か要求するはずだ


それを断り、あまつさえ利益にならない、とまで言ったのだ


驚くに決まっている

誰でもそうだろう



気が付くとその女子は出口の近くまで行き、俺を振り返ることなく声を発した



『・・・・・・それに、私は言いふらしもしないし、

そのようなことを起こす意味もない。

覚えていようが忘れようが、私には何の利益にもならない』


「・・・・・・・・・お前は、俺に何も求めないのか?」

『・・・何故?』

「・・・・・・・・・・・・いや、」

『・・・・・・言っただろう、利益にならないと』


最後に俺を一瞥し教室を後にした


足音が聞こえなくなった後で、ある机へと足を向ける



「・・・・・・・・・平野清、か」


面白いデータが取れそうだ























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