終焉ノ栞

□あい うぉんとぅ・・・
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ホームルームが終わり、いつもの様に旧校舎の音楽室へと向かう。



旧校舎までの道程は、ちょっと距離があるが気分良く口笛を吹きながら進んでゆく。

今日は、A弥来てるかなぁ〜?なんて乙女な事を考えながら。

ちなみに足は勝手に早歩きになっている。







いつもの見慣れた旧校舎の扉を開くと、

奥から階段を昇る音がする。



その音に吸い込まれるように、俺も上へ上へと昇っていく。



この足音…A弥だといいな……なーんt「あれ、C太?」



丁度あと少しで音楽室の階と言う所で、頭上から声がする。



「あ…A弥?今日は早いね。」



この声は俺の幼馴染みであり、こ…恋人でもあるA弥。

階段の手すり辺りから、ひょっこり顔を出している。



三段飛ばしで階段を駆け上がり、愛しきA弥の元へと駆け寄る。



「ねぇ、今日B子とD音…学校休みだって。インフルらしいよ。」



「へぇ…そうなんだ…」



B子とD音の理由は分かっている。

どうせ夜遅くまで二人で…なんて。風邪の延長戦だろ。

はっきり言ってどうでも良いな。



がちゃり、と音楽室の扉を開ける。

ついでに鍵も閉める。



「しぃーた?」

「ん?」



A弥可愛いいいいい!!!上目遣い俺得!!!GJ!!

…く、そ…理性が…………



「何する?終焉ノ栞探しはやっぱり四人いなきゃ面白くないし…」



「んー…どうしよっか…」



旧校舎に来たとはいえ、俺の目的はA弥に会うことだし…

やる事も無いしなぁ…

家に帰って適当にパソコンやってようかな。



「じゃあ今日はもう帰「嫌だ。」



即答…

……期待しても良いんでしょうか…色々……。



「ちなみになんで?」



この問いに対して、A弥は少しためらってからこう言った。



「だって家に居ても独りだし。それならずっとここにC太といたい。」



「あ……そっか…ご、めん」



「良いよ。別に……大丈夫。」





A弥という恋人の存在。

孤独に気付いてあげる事も出来ない。ダメだなぁ…



あんなに欲しくて欲しくて、堪らなくて、

……時にはストーカー紛いな事もして…やっと、…やっと手に入れた。



でも、A弥をいざ手にしてみると

柔らかく暖かい。

予想通りな部分もあれば。



まるで高価な宝石の様。

加工しすぎたら壊れてしまう、希少価値の高すぎる…ダイヤモンドみたいで。(それこそ現実的に手に入らないけど。)





要するに、どこまでしていいのかが解らない。



「…た?…C太?…ねぇ…」

「ッ!!…ごめん。」



気が付いたらA弥は俺の間近に居て、上を見上げていた。







……もう無理だ。



「…C太…?」

「ね、A弥。俺、もう駄目だ。」



「なに、が「ごめん、許して」



だからなにが、と言おうとしていたA弥の口を自らの唇で塞ぐ。



いつもの無表情に驚きが混ざったような顔をしているA弥。



2、3度だけ…女とも、こういう関係にはなったものの…

ほんとに好きになった訳だから…強引にしたくはなかったんだ。



………でももう無理だよ!!

こんな可愛い無防備なうさぎみたいなA弥みたら襲いたくなるだろ!!!



出来るだけ優しく、A弥を支えながら舌で遊んでおく。



「んッ……は…ぁう…っ」



静寂な空間に君の声が響く。

愛しきA弥の、声が。





俺の知っている限り、A弥にとって初めてだろう。

出来るだけ焼き付けておきたい。他の奴となんかじゃ足りなくなる位に、



長めのキスを終え、「A弥、愛してるよ」なんて耳元で囁く。



空耳かと思う位の震えた小声で「僕も…」って聴こえてきた。

トロンとした瞳でこちらを見るA弥。



俺の知ってるA弥は、あくまでも表向きな部分だけなのかも知れない。



きっと俺も初めてみる表情。

現に…

キスするだけで、あんな甘い声出すなんて思わなかったし…

あんな色っぽくて無防備な顔するなんて知らなかった。



キスしといて今更ながら、俺何してんだっていう羞恥と、A弥は嫌だったんじゃないかという罪悪感に包まれる。



「ごめん。つい、」

「別に良いよ。僕も…なんか嬉しかったし。」

A弥がそんな事を言うなんて思わなかったから、思わず

「嬉しかった?」なんて聞き返していた。



「うん。僕にとっての初めてがC太で良かったってコト。」



と、紅く染まった顔でこちらに振り向くA弥。

意外と素直だった。





だから俺は、冗談混じりでこんな事を言ってしまった。



「じゃあ、もっと性的な初めても奪って良いの?」





A弥は数秒間空中を見つめ、意味が解ったのか

気付いた時にはショートしたパソコンのように、

漫画ならボンッと言う音をたてる位紅くなっていた。



「なななななななな何言って!!!!C太!!」

「ふふっ…」



実を言うとニヤけが止まらない。

A弥がここまでテンパるとも思わなくて、また新たなA弥も見つけた。

可愛いなぁ…







「…………べ……け……」



ボソボソとA弥の小声が聞こえる。



「…ん?何か言った?」



わざとおちゃらけて聞き返してみる。



A弥は目をぐるぐる回しながらこう言った。



「…別にC太がシたいなら良いんだけ…ど……」



トンでもない発言をして……



これは予想外だ!!!!





「うん。じゃあ今度しよっか。A弥公認って訳で。」



本音を言うなら床に押し倒して…ここで犯したい。今すぐ。





A弥はみるみる恥ずかしさか何かで涙目になっていく。



こちらを向きもせず、鞄を握りしめ扉に向かって走り出すA弥。



「ちょ…A弥!!??」

「もう知らないッ!!!!帰るッ!!!!」



そう言って扉へと向かってしまう。



「……待っ……待てよ!!」

帰ろうとするA弥の腕を掴む。

A弥の抵抗を無視して、無理矢理引っ張り自分の方へ抱き寄せる。



「…ッ!!」



きっと未だに混乱しているA弥の耳元でそっと囁いた。

「大丈夫。そんなすぐにはする気ないから。」



するとA弥の体が言葉に反応してくれたのかぴくんと跳ねた。



「ごめん。そんな風に言った訳じゃなかった。ごめん。」



この言葉が効いてくれたのか。

A弥は「分かっ…た……」と言って抵抗をやめた。







振り返ったA弥の唇をもう一度ついばんで、

「よーしっ、帰ろうか!!」と言う。



「うん。帰る。」



顔を赤く染めたA弥の手を引き帰路へつく。



俺と、ずっといてくれるかな。

思っていてくれているのかな。



俺はもうA弥が居るなら何も要らないよ?

A弥が望むのなら何でも叶えたい。何でもしてやりたい。



A弥、愛してるよ。

もう離さないから、この手だけは。









End





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