一なる元素とは
□嫌い
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気付けば医務室で賢木に珈琲をいれてもらっている楪那。
「…美味しいわ…」
とつぶやいた言葉はどうやら賢木にも聞こえたようでご機嫌の御様子。
だから
「勘違いしないで下さい。珈琲が美味しいだけで"先輩の入れた珈琲"は美味しいとは限りませんよ」
と言ってのける楪那。
本当はわざわざ後輩の為に有難うございます、などのお礼が言いたいのだが思った事が口から出ず出てくるのは毒だけ。
いつかは直してやる、など思っているのだが実際はうまくいかず心中だけにとどめて言う。
これでは嫌われてしまうだけだ、と日々不安に思う楪那だ。
特に賢木には大学の頃からの悪い印象しかないので周りより人一倍、毒舌になってしまう。
今だって「なんで皆本とは違って俺には敬語なんだよ?」という質問に「女たらしで有名だからです」と可愛げのない返事。
「ねぇ、試しに普通に話してみろよ?」
「先輩みたく楽観的でないので無理です」
と返す楪那。
はぁ、私ってこんなに可愛げなかったかしら?と内心では落ち込んでいる。
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