鬼灯の冷徹
□故に僕は嘘を吐く
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故に僕は嘘を吐く
静かな朝。白澤の店に、突如電話がかる。
「もしもし、白澤さんですね。今日、桃源郷へ頼んでおいた薬を取りに行くと先日言いましたが、まさか女性との用事なんて出来ていませんよね。」
...ったく、朝から鬼灯かよ。今日はツイてないなぁ。
「ないけど!...でも」
窓を開け、空を見上げる。
優しい風が頬にふれた。
今日は雲一つ無い
晴天だ
「今日の桃源郷はどしゃ降り。残念でした。びしょ濡れドブ蛇鬼神になりたくなかったら、来ないほうがいいね。」
桃源郷は夢の国。ほぼ毎日暖かい日差しが降り注ぎ、雨の日なんて滅多に無い。
電話の向こうで溜息を吐く彼は、もしかすると、全てを見通しているのだろうか。
(心まで?)
ふとそんな考えが頭をよぎり、無意識に胸を手で押さえる。
(何か...息が苦し...ってゆーか)
「キモっ。なにそれ見透かすってエスパー?だったら超キモっ」
「...さっきからブツブツゴチャゴチャと...そっちがキモいだろ。どうしたんですか。四千歳にて、遂にボケでも始まったんですか。」
つい口に出たと思った瞬間、冷静に指摘をされた。
「...まぁ、分かりました。もともと濡れた漏れたと喚く万年変態色魔の所なぞ行きたくありませんし。」
「ムッツリスケベに言われたかねーよ!!っか漏れたって!?」
ギャーギャー叫んで、怒りに任せて叩きつけるように、電話を切る。
変態野郎。...だがアイツがすんなり話を聞き入れるなんて意外だ。こっちにしては、それで嬉しいっていうか、もう万々歳だけど。
「じゃあ...」
何をしよう。今日は休日、店も休みだし、時間もたっぷり残っている。
「そういえば...」
薬草を丁度切らしていたことを思い出した。
「うん、それ取りに行ってこよ。」
誰にでも無く呟くと、ウサギ従業員たちがぴょこんと頭を上げた。