幻の奇跡(krbs)
□第1Q「黒子はボクです」
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ここは、誠凛高校。正式名称は、私立誠凛高等学校。
新設してから2年という、比較的、というか、かなり新しい校舎に、私、橙乃じゅりは、今日から通うことになる。
「ラグビー興味ない!?」
「将棋とかやったことある?」
「日本人なら野球でしょー。」
「水泳!!チョーキモチイイ!」
勧誘の嵐で誰もが進めない中、私は、
「桜が、綺麗だなぁ・・・・・、」
現実逃避をしていた。
「じゅりさん何現実逃避してるんですか?」
「あれれ、テッちゃんじゃないかー。」
桜の花びらを一枚一枚数えるという無謀なことをやっていると、いつから居たのかテッちゃんこと黒子テツヤ君がいた。
「じゅりさんは、僕を選んでくれたんですよね、」
嬉しそうに顔を綻ばせるテッちゃんに最初から決めていたからね、というと、赤司くん達が聞いたら怒られそうな答えですね、と返された。
「赤司くん達が怒る理由が分からないけどさー、怒られたら怖いなー。」
「・・・・・、大丈夫です、聞いてるわけないでしょうし、聞いていたとしても、多分怒られるのは僕でしょうから。」
水色のきれいな髪をなびかせて、苦笑を浮かべる彼に、そしたら私も怒られてあげるよ、と笑うと、そうですか、と綺麗に微笑まれた。
それからしばらく人ごみをかき分けながら、部活勧誘を断り続けていると、男子バスケ部のブースに着いた。
「テッちゃんは、バスケ、続けるんだよね。」
そうじゃないと、私がこの学校を選んだ意味が無くなるんだけど。
確認程度に私が茶化しながら聞くと、いつもの無表情で「当然です」とすぐ返事が返ってきた。
「もちろん、じゅりさんもでしょう?」
挑戦的な視線で見られたので、トーゼン、と口角を上げて返した。
ブースに座ると、ちょうど赤髪の子が、男の子に連れてこられ・・・、というか、なんか、連れてきて?いたところだった。
なんか面白かったので、私も必死に気配を消しながら入部届けを書いていると、アメリカ持込みとか聞こえてきたあたりで、テッちゃんも私も書き終えた。
「んー、もういいやー、だいたい彼のことわかったしねー。」
「そうですか。では行きましょう。」
満足げな顔で立つと、どうですか?と聞かれたので、少し言うのを迷ったが、伝えることにした。
「・・・足りない、けど、素質はある。足の筋肉を重点的に、もっと鍛えることをすれば、キセキの世代に及ばないことも無いよ。」
後は、人間的な面を見ていくしかないかな。
私がそういうと、少しだけ、青髪の彼を思い出したのか眉間に皺を寄せて、「そうですか、」と呟くように、そう、言った。
「でもさ、」
「?」
「彼は、大丈夫だって、そんな気がするんだ。だから、そんな怖い顔しなくても、へーきだよ。」
せっかくの綺麗なお顔に痕が出来ちゃうぞー?と笑うと、茶かさないで下さい、と脇腹をつつかれた。
うーん、地味に痛い。
脇腹を抱え、しばらくその場で唸っていると、学校に遅れるんで行きますよ、と手を引かれた。
そして、今日から、私とテッちゃんの、打倒キセキという夢に向けての一歩を踏み出した。