鈴蘭…清らかな愛

□世界は君を渇望してる
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こちらのお話は
″ご挨拶のお供には棒アイスを″
の続きになっておりますが
上記のお話をお読みになっていない方でもお楽しみいただけます。

─────────────


「ほ、ほんとにいいのかなー…ローちゃんとユースタスくんに了解とった??」

「くく、俺がいいって言ってるんだからいいに決まってんだろ」


また俺様発言…なんて困ったように隣で呟く 彩楓

車の冷房のおかげか先程までとは違い大分口数も増えてきた

こうして信号の合間に彼女の手をとれば柔く握り返してくれる


「……クーラーは必要だな」

「ん、いきなりどしたの?」

「 彩楓、お前さっきは手握り返してこなかっただろう」

「あ…っだ、だって、暑かったし…」

「くくくっ、そうだな。だから一刻も早くクーラーが必要だ」

「ローは暑いの我慢出来るのに?」

「生憎、暑さは我慢できても彩楓 に触れることは我慢できないもんで」

「ふふ、そっか」


そうこうしている間に大学の前を通り過ぎ、住宅街へやってきた

細い路地を注意しながら車を走らせ
目的地へと向かう


「よし、着いたぞ」

「はぁい」


助手席の扉を外側から開け、彼女の手をとる


「どうぞ、お嬢さん」

「ふふ、ありがと」


その手元には彼女が先程家で食べていたものと同じアイスキャンデー


「溶けてないかなぁ」

「溶けてても大丈夫だろ」

「ちょ、それどうゆう意味!ローさっきからユースタスくんの扱い雑すぎ!」

「ほら、それ以上アイスを溶かしたくねぇなら早く行くぞ」

「っ!わ、分かってるよ!」




ピンポーン

軽快なチャイムの音が鳴ると、中から見慣れた暑苦しい顔が出てきた

ガチャ

「おう、トラファルガー、やっと来た…

ガチャ

「…」

「…」

ドン、ガチャ!!!!

「てめぇ!なんで今閉めやがった!」

「悪い、あまりの暑苦しさに虫唾が走った」

「はぁ?!てめぇがチャイムを押して俺を呼んだんだ…あれ」


その赤い瞳が映すのは

あぁ、やっと気が付いたのか


「あ、あの、初めまして! 彩楓です!」

「へっ、あ!あぁ!やっとか!やっと俺に紹介する気になったのか!」

「気まぐれだ」

「 彩楓!よろしくな!俺はユースタス・キッドだ!」

「おい、ユースタス屋。呼び捨てにしてんじゃねぇよ」

「ちょっとロー!失礼でしょ!すみません、いつもローがお世話になってます」

「おいおい、ほんとにお前の彼女か?
こんな礼儀正しくて清楚そうな子が!」

「そろそろバラすぞ、ユースタス屋」

「とりあえず、暑いし中入れよ!あぁと、汚ぇけど多目に見てくれ」

「おじゃまします!」

「おう!」

「あぁ、そうだユースタス屋、ちょっと外出てみてくれ」

「あ゛?なんだよ」


ガチャ


「てめぇ!閉めんじゃねぇよ!俺の家だ!」
 



そんなやりとりから数時間

目の前には涼しげに流れる白い麺

そして楽しそうにはしゃぐ 彩楓と馬鹿丸出しのユースタス屋


「これ、キッドくんがつくったんだよね?」

「ん、あぁ、竹から切り出してきた」

「お前、暇だろ、相当」

この狭いアパートのコイツの部屋をほぼ占領してきるソレはかなりの大きさで

「なんとでも言え!楽しいだろ!実は楽しいだろ、トラファルガー」

「俺は 彩楓がいればいつでもどこでも楽しい」

「ちょっ、ロー!」

いきなり自分の名前が出たことに驚いたのか、顔を赤らめ動揺する彼女

なんて可愛いのか


「ラッキーだったな、ユースタス屋」

「んぁ?なにがだ」

「こんな可愛い 彩楓を見れてに決まってんだろ」


そう言って 彩楓の肩を緩く抱くように此方に引き寄せれば、耳まで赤くして照れ始める


「あぁー!てめぇら暑っちぃんだよ!!てめぇらだろ!この暑さの原因!!」



この部屋の設定温度は24℃

そして涼しげな流し素麺

極めつけには風鈴だ


だが、それでも目の前の愛しい彼女と真っ赤なやつはまだ暑いらしい


どうする、 彩楓?

俺たちはどうやら異常気候の原因らしいぞ

なら離れるか?そんなまさか




どこまであがるか試してみようじゃないか




(はぁー楽しかったね!)
(…)
(それにおいしかった!!)
(…)
(ねぇ、ちょっと聞いてる?ロー)
( 彩楓、涼しい場所に居てもどうせ暑くなるんなら)
(…へ?)
(どっちみち結果は一緒だろう?)





世界は君を渇望してる

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