鈴蘭…清らかな愛

□ご挨拶のお供には棒アイスを
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ミーンミンミンミンミン

「…」

ミーンミンミンミンミン

「…」

「 …彩楓」

ミーンミンミンミンミン

「………………んー」

「 彩楓、そこらへんでやめとけ」

「…………やら」

「 彩楓」

「………やら」

「やだじゃねぇだろ。お前今何本目だ」

「…さん」

「腹こわす、もう駄目だ」


そう言って、私の手から食べかけのアイスキャンデーをスッと抜き取ったのは、言わずもがなロー氏だ


「……」

「なんだ、抵抗する気力もねぇのか?それとも聞き分けがいいのか?」

「…どっちも」

「くくくっ、そうか、 彩楓は暑くなると聞き分けがよくなるのか」


ダイニングテーブルにぺたりと顔はつけたままでちらりと目線だけ彼を見やれば、そこにはいつもの調子でニヤニヤと笑うロー


「…ロー、暑くないの…?」


汗一つかいていない様子の彼は涼しげにアイスコーヒーを口にしている


「お前が尋常すぎんだろ」


そう、私は大の暑がり

そして


「寒さにも弱いが暑いのも駄目とは、どこまで我が儘なお嬢さんなんだ」


これは体質なんだから仕方がない

と言い返したいけど、今はその体力さえも惜しい


「うぅ…早く、クーラー…」

「届くのは明日だろ?」

「うぐぅ………」


そう、もう太陽も真上に上がっている時間は普段ならばクーラーをつけていて快適な気分で過ごせているはずなのだ

それが今出来ていないの、二日前にクーラーが壊れたからであって…



「そうだ、涼しくなる話、してやろうか?」


ふと、ローがそんなことを言い出した


「怖い話…?」

「そしたら 彩楓、寝れなくなるだろ?」

「ふふ、気を使ってくれてるの?」

「あぁ、勿論」


あぁ、優しい
こんなだらだらな私のために、彼は一生懸命私を笑わせようとしてくれているのだ

今も彼は私を内輪でぱたぱたと扇ぎながらお話してくれている


「流し素麺」

「…くすくす、うん、それが?」

「ユースタス屋が家で一人でしたらしい」

ユースタスくんと言えば確か…

「ユースタスくんって、あれだよね、同じ大学で…」

真っ赤な髪が目立つことで有名、
そしてなによりローの数少ない友人のひとりだったはず

「あぁ、あの暑苦しいやつだ。今の 彩楓にはその存在自体が苦痛だろ?」

「え?…ふふっ、そんなことないよ。ローのお友達でしょ?またお話ししてみたいなぁ」

「あー、馬鹿が移るからやめとけ」


あらあら、ユースタスくん酷い言われようですよー


「…ふふふ、はい、素麺がどうしたの…?」

「あぁ、それがな、竹でいちからつくってやったらしいんだがな」

「すご…本格的ですね」

「あぁ、だからな、今から食いに行くか?」

「……え?」

「あぁ、でも馬鹿が移るからな、ユースタス屋だけ外に出して、俺ら2人で素麺パーティーでもするか」

「え、ちょ、ロー?私、お話したこともな…」

「安心しろ、クーラーは勿論付いてる」

「…涼しい…お話?」

「あぁ、涼しいお話のお誘いなんだが…どうでしょうか?我が儘お嬢さん」


冷たい風に誘惑されて

向かう先はまだ見ぬhotな彼の元

さぁ、手土産を冷凍庫から出したなら




溶けないうちに、氷の世界へ



(ほ、ほんとによかったのかな)
(もう車出しちまったしな)
(どっ、どしよ!ユースタスくんてなんか顔怖そうだったし…竹で頭叩かれたりしないかな?!)
(…くくくっ、お前、それは俺より酷いんじゃねぇか?)




ご挨拶のお供には棒アイスを

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