鈴蘭…清らかな愛
□春告げ鳥
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「へっくちっ……うぅー…」
…
「へ、へぶしっ!…あぁー…ふ」
…
「びぇっくしょん!!!!!」
彼女と俺は今、今日の晩飯の材料を買い終わり、家路を歩いている。
「ふぅー…あ、ごめんね、ロー。それでね、話の続きなんだけどね、あーと……」
「春が来たと思う時はどんな時かって話だろ?」
「そうそう!今日、ナミちゃんとロビンさんと話してたの!」
にこにことあまりにも楽しそうに笑う彼女が笑うものだから、つい、無意識のうちに頭を撫でてしまう。
彼女はそんなことは慣れているからか、特に驚いた様子もなく、一瞬俺に向かって微笑み、また話を進め始めた。
「ナミちゃんはね、冬物の服がバーゲンに出だしたら春だなぁって思うんだって!」
面白いでしょ?とくすくすと笑いかけてくる。
「それでー、ロビンさんは春告げ鳥の鳴き声が聞こえたら春だって思うんだよー!風情があるよねー」
ほう、確かに風情があるな。
確か春告げ鳥はうぐいすの別名だったはずだ。
そんなことを考えていると、いきなり隣から奇異な声が聞こえてきた。
「ほーほけきょ、ほーほけ…っくしゅん!」
多分、春告げ鳥はうぐいすで、うぐいすと言えばこの鳴き声だと言いたかったのだろう。
「 くくく…彩楓、お前はどんな時に春が来たと思うんだ?」
「私はねー、ドライヤー!」
「ドライヤー?」
言葉の意味が分からず、同じ言葉を聞き直す。
「髪の毛を乾かしてる時にね、ドライヤーの熱風が暑いなぁって感じたら春だなぁって思うよ!」
至極真面目な顔をしてそう言うものだから、可笑しくて仕方がない。
「くくっ… 彩楓、それじゃあ 、あの女と大して変わらねぇじゃねぇか。」
「っ!!じゃ、じゃあローはどんな時に春だなぁって思うの?!」
ふてくされながら、俺を見上げる 彩楓 に思わず頬が緩む。
「くくく、そう怒るな 彩楓。可愛いだけだぞ。」
「まっ!そ、そんなのでごまかされないもん!!」
「あー、くく、分かった。春が来たと思う時か?」
「そう!」
いちいち春の訪れなんかに反応しない質の俺には少々難問だ。
「っくしょん!」
…
「っへぶし!!…あー」
…あぁ、
「ふぇ、べっくしょん!!!」
…成る程。
「 彩楓、それだ。」
「ふぇ?」
「俺が、春が来たと思う時。」
(っ!ローの馬鹿…っくしょん!!)
(くく、馬鹿っくしょんってなんだ)
(〜!!!も、もう許してあげないんっだっくしゅん!!…っあぁぁ!もう!!)
春告げ鳥…春を告げるのは君の可愛いくしゃみ