鈴蘭…清らかな愛
□春眠暁を覚えず
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まだ太陽が顔を出しきっていない時間。
ふと目が覚めて、隣を見る。
そこには、愛しい愛しい人の姿。
その人には珍しく、熟睡しているようだ。
睫毛、長い…
鼻筋、綺麗…
唇の形、整ってるなぁ…
改めて間近で見るその顔に見とれて、ついついぺたぺたとその顔を探るように触っていた。
すると、不意に降ってくる優しい笑い声。
「くくく…どうした? 彩楓??朝から積極的だな」
私の髪を優しく撫でながら隣で微笑む。
「おはよ、ロー 」
「ん、おはよう」
彼の身体に抱きつきながら鼓動を聴く。
「あのね、珍しいなぁって、思ってたの」
「何がだ?」
「ロー、いつもなら私が起きる前に絶対目、覚ましてたから」
「あー、今日はお前より遅かったな」
「うん」
「くく、なんだ?それで拗ねたのか?」
「違うよー、疲れてたのかなぁって…」
心配になって、彼に回す腕に力がこもる。
彼もそれに答える様に、私を包み込んだ。
「 彩楓 、”春眠暁を覚えず”だ」
彼が言った難しい言葉に、眉間に皺がよる。
「くくく、"春の夜は気持ちがいいから夜更かしをするのが多いので、つい、朝になったのも気付かないで眠ってしまいがちだ"」
「そーゆー意味なの?」
「あぁ」
ふむふむ、やはり彼は博識だ。
「でも、この考えでいくとお前はいつも頭ん中が春ってことになるな」
いつもの意地悪な笑顔で私を見る彼。
「ふふ、違うよロー」
「ん?」
ローの鼻をつつきながら静かに話す。
「私の春はね、ローなの。だから…」
彼が私の頬を撫でる。
ほら、もうそれだけで夢の世界へあっという間に引き込まれてしまう。
彼は微笑んだ顔で私にキスを落とす。
「おやすみ、 彩楓 」
きっと次に目を覚ましたとき、最初に目に映るのは彼の優しい笑顔。
*春眠暁を覚えず…君の腕の中は気持ちが良くて、つい、朝になったのも気付かないで眠ってしまうの *