鈴蘭…清らかな愛
□3月9日
1ページ/1ページ
今日も晴天。
頬を撫でる風も暖かくて、心地いい。
「太陽さん、いつも暖かい光をありがとうございます。」
部屋のカーテンを開けながら呟いた。
「ベットさんも、お布団さんも、いつも心地いい眠りをありがとうございます。」
よし。
ベットから降りて、寝室を出てリビングへ向かう。
ドアを開けたらそこに居たのは、もちろん…
「 彩楓 、おはよう。」
あ、いい匂い。
朝食作ってくれたんだ。
そう思ってふふっと微笑む。
そんな私を訝しげに見つめ、こちらに歩み寄って来る彼。
「 彩楓 ?どうした?」
今朝も相変わらずに深い隈。
少し寝癖のついた髪。
私を撫でる、大きい手。
その全てに
「ロー、ありがとう。」
にっこり笑って言えば、ローは首を傾げて何か考えているみたい。
「ふふ。ロー、今日はね3月9日でしょ?」
「あぁ、そうだが?何かの記念日か??」
そう言って、壁にあるカレンダーをまじまじと眺める。
そんな姿が可愛らしくて、思わず胸に飛び込んだ。
「さんきゅー。」
ローの胸の中で呟けば、籠もった声が漏れる。
「…あぁ、なるぼと。」
そう言いながら、くくくと笑うローを見上げると納得したという顔をしていた。
すると彼の手が愛おしむ様に私の頬を撫でる。
「ロー?」
「くくっ…あー、お前、だからか。」
「??」
「だから朝起きてから、目につくもの全部に礼を言ってたのか。」
ローの言葉に思わず目を見開く。
「き、聞いてたの?!」
「あぁ、聞いてた。リビングのドアにまで頭を下げたときはかなり驚いたがな。」
そう言って、また笑い出す。
「っ!感謝する日だもん!ローも早くドアさんにお礼言って!いつも開いてくれてありがとうございますって!!」
恥ずかしくて赤くなる頬を見られるのが悔しくて、ぐいぐいローを扉まで押す。
でも、全力で押してるにも関わらず、ローの体は一ミリも動かないものだから困ってしまう。
「 くく、彩楓 、悪かった。」
その言葉にゆっくり顔を上げて、ローを見る。
「…ありがとうは?」
「ん?あぁ、ドアには言わねぇよ。俺はそんなに安い男じゃねぇからな。」
「ぷっ…何それ。」
ローの俺様な態度が面白かったので、すっかり機嫌が良くなった私はとっくに焼き上がっていたトーストを皿に乗せようと、キッチンに向かおうとしたとき、
「 彩楓 、ありがとう。」
そんな言葉が不意に後ろから響いた。
(ふふふ。ロー様は安い男じゃないんじゃなかったの?)
(当たり前だ。但し、例外ってもんは必ずあるもんだろ?)
3月9日…君という存在に、ありがとう。