鈴蘭…清らかな愛

□3月9日
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今日も晴天。
頬を撫でる風も暖かくて、心地いい。

「太陽さん、いつも暖かい光をありがとうございます。」

部屋のカーテンを開けながら呟いた。

「ベットさんも、お布団さんも、いつも心地いい眠りをありがとうございます。」

よし。

ベットから降りて、寝室を出てリビングへ向かう。

ドアを開けたらそこに居たのは、もちろん…


「 彩楓 、おはよう。」


あ、いい匂い。
朝食作ってくれたんだ。

そう思ってふふっと微笑む。

そんな私を訝しげに見つめ、こちらに歩み寄って来る彼。


「 彩楓 ?どうした?」


今朝も相変わらずに深い隈。
少し寝癖のついた髪。
私を撫でる、大きい手。

その全てに


「ロー、ありがとう。」


にっこり笑って言えば、ローは首を傾げて何か考えているみたい。

「ふふ。ロー、今日はね3月9日でしょ?」

「あぁ、そうだが?何かの記念日か??」

そう言って、壁にあるカレンダーをまじまじと眺める。

そんな姿が可愛らしくて、思わず胸に飛び込んだ。

「さんきゅー。」

ローの胸の中で呟けば、籠もった声が漏れる。

「…あぁ、なるぼと。」

そう言いながら、くくくと笑うローを見上げると納得したという顔をしていた。

すると彼の手が愛おしむ様に私の頬を撫でる。

「ロー?」

「くくっ…あー、お前、だからか。」

「??」

「だから朝起きてから、目につくもの全部に礼を言ってたのか。」

ローの言葉に思わず目を見開く。

「き、聞いてたの?!」

「あぁ、聞いてた。リビングのドアにまで頭を下げたときはかなり驚いたがな。」

そう言って、また笑い出す。

「っ!感謝する日だもん!ローも早くドアさんにお礼言って!いつも開いてくれてありがとうございますって!!」

恥ずかしくて赤くなる頬を見られるのが悔しくて、ぐいぐいローを扉まで押す。

でも、全力で押してるにも関わらず、ローの体は一ミリも動かないものだから困ってしまう。


「 くく、彩楓 、悪かった。」

その言葉にゆっくり顔を上げて、ローを見る。

「…ありがとうは?」

「ん?あぁ、ドアには言わねぇよ。俺はそんなに安い男じゃねぇからな。」

「ぷっ…何それ。」

ローの俺様な態度が面白かったので、すっかり機嫌が良くなった私はとっくに焼き上がっていたトーストを皿に乗せようと、キッチンに向かおうとしたとき、


「 彩楓 、ありがとう。」


そんな言葉が不意に後ろから響いた。




(ふふふ。ロー様は安い男じゃないんじゃなかったの?)
(当たり前だ。但し、例外ってもんは必ずあるもんだろ?)






3月9日…君という存在に、ありがとう。

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