犬夜叉〜短編集〜

□三年目の桜の木で
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貴方がこの世を去ってから三年が経ちました。

恋人の私を放って、貴方は逝ってしまいました。



そんな事を思いながら、春の風にあたる私、
名無しさん。


かつて恋人だった蛮骨を忘れた日なんて一度も無い。
忘れられる訳が無い。

大好きだったあの人…。
力強い腕も、守ってくれる背中も、優しい笑顔も、全部…全部…もう、見れない…。



瞳から一雫の涙が溢れ落ちる。
ザァっと、風がふくと私の着物は風に靡いてゆらゆら揺れる。

ほんのり暖かい空気と、心地の良い森林の中を歩いて、大きな一本の桜の木の下に立った。

大きな桜の木にそっと触れると、愛しく見上げた。

そして、根元に刺してある大きな蛮竜を見つめた。


蛮骨が持っていた時は、ピカピカだったな。
なんて思いながら、錆びついた蛮竜に触れる。


もう、あの人はこの世に居ないのに。
私はまだ蛮骨の帰りを待っている。
もしかしたら、ヒョッコリ帰ってくるかもしれない。
笑顔で、遅くなってごめんって…言ってくれるかもしれない。

蛮骨の好きだったお酒を蛮竜の横にそっと置いた。


三年目の桜。
貴方はもう生まれ変わってるのかな?
生まれ変わってるなら、私と出会えましたか?
私は、もう一度…貴方に会いたい。





私は名残惜しそうに桜と蛮竜を見ると、その場を離れた。

また来年、来るからね。
そう呟いて来た道を戻る。



また…来年………。
 

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