犬夜叉〜短編集〜

□淡い雪の中で
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駄目だ…。
まだ…、こんな所で…。


蛮骨…。


雪…。
冷たくて気持ちいい。
まだ、温度が分かる。
今なら…、蛮骨…。
ねぇ蛮骨…、あなたの温もり感じたいよ。

今、どこに居るの…?

早く来ないと、あたし…。


立つのもやっとだ。
もぉ、駄目だ。


雪の積もった上に倒れこんだ。


赤い雪だ。

あたしの所だけ…、赤い雪だよ…?

蛮骨、早く来て見てよ…。


もぉ温度も感じないや…。

蛮骨…先にいくね…。


そのまま意識を手放した。



………。


蛮骨
「名無しさん…、戦まだ終わんねぇのかよ?よし、俺が迎えに行ってやるか。」

蛮骨は蛮竜を置いて、小屋を出た。





蛮骨
「さっみぃなぁ、雪積もってやがる…。ん?」


赤く染まった雪が一人の女を包み込んでいた。


蛮骨
「名無しさん…?!」

蛮骨は急いで名無しさんの上に積もった雪を払ってやる。


触ると身震いする程の冷たさだった。
血は止まることなく雪を染めていく。


蛮骨
「なぁ…、おい。いつもの遊びだろ?…ほら、目開けろよ?」




蛮骨は静かに涙を流しながら名無しさんの冷たい唇に接吻した。


蛮骨
「俺が逝くまで、ちゃんと待ってろよ…。」


蛮骨はその場を立ち去った。


振り向かず、頬を伝う雫は雪を溶かす程の温もりと哀しみだった。



【完】
 

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