捏造回顧録

□捏造だZ
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俺が不器用なのは自覚しているZ。
事、人付き合いに関しては全くだZ。
そして俺は生まれながらの市原悦子体質だZ。
市原悦子体質と言うのは、俺の居る場所で必ず何かが起きて、俺はそれを目撃してしまうことだZ。

俺はその名の通り、斉藤家の終わりの子、つまり末っ子だZ。
上の兄弟達と仲良くしたくて、俺はいつも兄達の後を一生懸命ついて回ったZ。
一緒に遊ぼうの一言が言えなかったZ。

「な…なんだ、居るなら居るって言えよ」

自分の存在を知らしめろと兄は言ってくれたZ。
しかし、その言葉に続くのは、いつも決まって

「いいか、絶対、誰にも言うなよ?」

口を封じる言葉だったZ。
兄達はこぞっていつも悪巧みを企て、楽しそうにしているZ。
末っ子の俺に発言権はなかったZ。
そして兄達は言うZ。

「いいな、誰にも言うな」
「言うなよ?」
「今見たことは、誰にも言わねえよな?」

みんなが俺に望んだことは、口を閉ざすことだったZ。


友達が欲しかったZ。分かり合える奴が欲しかったZ。
口止めばかりされて育った俺には、人と仲良くなれる程の話題を持っていなかったZ。
誰になんと声を掛けて良いのかさえ分からなかったZ。
そして俺は言葉を諦めたZ。

大事なのは笑顔だZ。

近所の子供達が、あそこの家の柿の実を盗りに行こうと相談していたZ。
それはいけないことなのは、分かっていたが、子供らしくて微笑ましいZ。
俺は子供達に向かって微笑みを投げ掛けたZ。

一目散に逃げられたZ。

通りをきょろきょろしている男が居たZ。
道に迷っているのだろうか?よかったら俺に道を尋ねて欲しいZ。
そう思い、俺は男に微笑みかけたZ。

やっぱり逃げられたZ。

俺が微笑むと人が逃げるZ。
そして近所で噂が立ったZ。

悪ガキの悪戯が無くなった。
空き巣が減少した。
寺小屋の子供達の間では悪魔の微笑みを見た者は自分の悪さを反省しないと三日以内に死ぬという都市伝説がまことしやかに囁かれている…

と言う物だったZ。

気のせいだZ…


ある日、村で張り紙を見かけたZ。

“言葉は要らない。剣で分かり合えることがある。君も侍にならないか?
           ○○道場”

とある道場の門下生募集の張り紙だZ。
俺はそのキャッチコピーに心を打たれたZ。

だが、その道場は月謝が要ったZ。しかも家から遠かったZ。
俺は近所の試衛館と言う道場に入門したZ。
剣に打ち込めば言葉は要らなかったZ。
そして、ついにこんな俺に懐いてくれる人が居たZ。

「終兄さん」

俺をそう呼んでくれたのは、沖田総悟君だZ。

「終兄さんは強くて、寡黙で格好いいっすね。クールな振りして余計な御託ばかりのどっかのアホマヨラーと違って、俺ぁ終兄さんを尊敬しまさぁ」

こんな俺を、
言葉を発しない俺のことを、

寡黙で格好いいと言ってくれたZ。

思わずにやけそうになって厠へ駆け込んだZ。
そしてその時俺は初めて自分の笑顔を鏡で見たんだZ。

なるほど、これは怖いZ…
この目付きと、人より大きめな口。
どうせ人と会話できない口だZ。俺は口を布で覆い隠すことにしたZ。 

俺はこの道場で初めて自分の居場所を見つけたんだZ。
初めて人とふれ合ったんだZ。
初めて自分の存在を認めて貰ったんだZ。
そしてここでは、誰も俺に口止めなんて事をしなかったZ。



「Z〜…」
「終兄さん、起きてくだせぇ、終兄さん」
「…」

いつの間にかうたた寝をしていたZ。沖田君に起こされたZ。

「腐れの方の副長が呼んでまさぁ」
「…コクッ」

俺は返事と、起こしてくれた事への感謝の意味で頷いたZ。

コンコン
襖をノックしたZ。

「斉藤か。入れ」
「…」
「座ってくれ」

その部屋には山南副長と、腐れの方の副長と呼ばれた土方副長、そして山崎さんが居たZ。
俺は山崎さんの隣に腰を下ろしたZ。

「これから山崎を密偵に出す。剣を習わなかったこいつ一人じゃ少々心許ないんでな、斉藤に同行を頼もうと思うんだが」
「コクッ」
「そうか。じゃ、頼んだぞ」

山崎さんと外に出たZ。江戸の侍は昔何かで見た侍と、本当に同じだZ。
弁髪に髷を結っているZ。草履を履いて摺り足で歩いているZ。
俺は感激して嬉しくなって自然と笑っていたZ。
そのお侍さんと目が合ったZ。あからさまにイヤな顔をされたZ。
そのお侍さんは走って行ってしまったZ。
気分を害してしまったのだろうか。そんなつもりじゃなかったんだZ。せめて頭を下げて謝りたいZ。
俺はお侍さんを追いかけたZ。
なぜか山崎さんも走って付いて来たZ。
そして俺はついにお侍さんを捕まえて足を止めさせることが出来たZ。

「かっ…勘弁してくれぇええ!」
「?」

お侍さんは悲痛な声を上げたZ。
すると山崎さんは懐から一枚の写真を取り出したZ。

「斉藤さん、流石。お手柄です」

意味が分からなかったZ。山崎さんがその写真を俺に見せてくれたZ。その写真にはこのお侍さんが写っていたZ。

「指名手配中のテロリストです」
「…」
「ほら、爆弾持ってました。脇差しも携帯してますね。現行犯です」

お侍さんはしょっぴかれて行ってしまったZ…
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