捏造回顧録
□捏造回顧録22
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山崎とミツバの元に、江戸から封書が届いた。
中には隊服を着込んだ全員の集合写真と、ミツバには近藤・沖田からの手紙、山崎には、原田・土方からの手紙が入っていた。
たまにミツバの体調や様子をうかがいに行っていた山崎は、その日も江戸から届いた封書を持ってミツバの家を訪ねた。
「見ました?」
「見た見た!皆、立派に写ってたわね。随分逞しそうに写ってるから見違えちゃったわ。惚れ直しちゃう!」
ミツバも絶好調のテンションだった。
「総くん、一番隊の隊長ですってね。おめでとうございます」
山崎はミツバに頭を下げた。
「うふふ。あの子にそんな大役務まるのかしらね?心配だわ…でも、嬉しい!」
そう言ってミツバは思わず山崎に抱きついた。
「ははっ…」
(こんな所、今の土方さんに見られたら、即刻あの刀で斬られるな…)
山崎は青冷めながら苦笑いを浮かべた。
手紙の内容は、まず全員が共通して書いていたことは隊服と刀の支給があって隊の編成が決定したこと、江戸での生活、そして「食糧難」と言う問題だった。
「お野菜は日持ちしないから、乾物とお米でも送ってあげましょうかしらね」
「そうですね」
近藤は、沖田の振る舞いのはちゃめちゃっぷりを書き、自分が責任を以てミツバの代わりに総悟を躾ると締めていた。
「まぁ、あの子を躾るなんて、頼もしいわね」
「近藤さんなら多分、大丈夫ですよね」
沖田は「仮屯所」内の現状(主に愚痴)と土方の無いこと無いこと(主に悪口)を書き立て、「いつか副長の座を手に入れます」と締めていた。
「総くん、相変わらずですね」
「元気そうで何よりだわ」
ミツバは屈託なく笑った。
原田は髪を切る際失敗して思い切って剃ったが、それが意外にらくちんで大いに気に入っていることを書いていた。
「でも、似合ってるじゃない!ねえ?」
「いや…厳つさはVシネ級ですよ…」
土方からの手紙には、
もう一人の切れ者の男と並んで副長になったこと、皆はその男の事を副長と呼ぶのに対し、自分は未だに原田からは「土方」、総悟からは最早悪口としか思えない呼び名であれこれ呼ばれているという愚痴、もう一人の副長の出来の良さが気に入らないが認めているという事、
そして…
その男の提案で「監察」と言う役割を担う人材を必要としていることが書かれていた。
「土方さん、相変わらず総くんに手厳しくやられてますね」
「…違うでしょ、山崎さん」
「え?」
「まだ分からないの?十四郎さんは、あなたに来て欲しいって書いてるのよ?」
「そんな文面は一言もありませんでしたけど…?」
「どうして気付かない振りをするの?」
「…食糧、調達して送りに行きましょうか…」
「んもうっ!!」
山崎のその煮え切らない態度に、ミツバは少し嫉妬しながら、怒りを覚えた。