捏造回顧録
□捏造回顧録19
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「あれ?退、おめ…何で此処に居るんだ?」
「はい?」
「だってあれだろ?道場の奴ら、江戸に向かったって聞いたが」
「オレ、関係ないですよ?」
試衛館道場の者達が江戸へと旅立った翌日のこと。
山崎はいつものように家に居て、朝食をとり、瓦版配達のバイトへ行き、帰ってくると忍術稽古をしていた。
「俺ぁてっきり、おめえがあいつ等と仲良くつるんでっから、付いてくもんだとばかり思ってたよ」
「仲良くしてるから付いて行くなんて、そんなヌルい事じゃないですよ」
「あ、あぁ、まぁそうだわな…」
山崎は父とそんな会話を交わしながら、庭で黙々とクナイを的に当てる練習をしていた。
「さてと、そろそろ」
稽古に切りを付け、山崎は道場へ向かった。
そこにはミツバも居た。
「じゃ、始めますか」
山崎がミツバにそう声を掛けると、ミツバは腕まくりをしてたすき掛けをし、笑顔でうなずいた。
人の居なくなった道場の掃除。
郷に錦を飾りに戻ってくる、その日を迎えるため。