メインの弐
□タイガーアンドホース
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「原田、おはよう」
「おう、山崎おは…おい」
「ん?」
挨拶の声に振り返り、見た山崎の姿は何とも異様だった。
「なんつーか…大丈夫か?」
「え?なにが…?」
声にも覇気がない。
それ以前に、随分とゲッソリしてヤツレている。顔色もあまり良くない。
なのに
肌艶が異様に良い。ツヤツヤっていうかテカテカしている!!
変だ!
「何かあったのか?」
「何かあったって…オレ、そんなに心配されるような見てくれ…してるよな、やっぱ」
「あぁ、正直異様だぞ」
「実はさ、昨日…」
回想
「副長、お誕生日おめでとうございます」
「あぁ、ありがとな」
「で、誕生日プレゼントって言っても何を用意したらいいのかわからなくて、とりあえずこれ…」
マヨネーズを差し出した。
「まぁ、そうだろうな」
「お気に召しませんでしたか?」
「いや、そうじゃねえ」
顔色一つ変えず、副長は淡々と話した。
「みんなこぞってマヨネーズをくれるんだ。こんな夢のような話はねえが、いざ現実にこれだけのマヨネーズを消費しようとなるとだな…」
そう言って押入の戸を開けると、マヨネーズが雪崩のように崩れ落ちてきた。
「とてもじゃねえが、流石の俺にもこの量は消費期限内に消費できる気がしねえ」
「あー、そうですね。早くしないと夏も来ちゃいますし、とにかく保存場所をまず確保しないといけませんね」
「そこでだ、山崎。俺は妙案を思いついた」
イヤァアアアアアアアアアッ!!!!
「ここから先は、まぁ想像はつくよね…?」
「あ…あぁ、なんとなくだが」
俺は世にもおぞましい想像をしてしまった。
鳥肌が立ち、身震いをした。
「もし俺が想像した通りのことを副長がしたのなら、食べ物を粗末にするなと叱ってやらにゃいかんな…」
「あ、原田さすが勘が鋭い、けど…あの人は食べ物を粗末にしてない…」
「え?!」
「あの人は全部きちんと腹に収めたよ…」
ヒィイイイイイイイイイイッ!!!!!!
グェップ、想像しただけで気持ち悪りい!!
胸焼けがする!!
「そう言うわけでオレは精も魂もマヨも…何もかもあの鬼に吸い取られたよ…」
「大変だったな…」
「あぁ、その気になればあの黄色い油の塊は人をも殺せるとオレは知ったよ」
誕生日翌日、5月6日。その日副長は、一日中機嫌が良かった。
あの人はまさに鬼、だ。
マヨネーズを殺人兵器に昇華できる。恐ろしいお人だ。