メインの弐

□星を見ていた
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幼い頃の夢だろうか。
同じ夢を何度も見る。

幼い俺は今にも泣きそうで、側にいる男の人が「もう駄目だろうな。ここまでだ、ありがとう」と、俺に微笑みかけて言う。
すると俺は、ある同じ年の頃の少年の顔を思い浮かべる。
そして、その男の人の言葉に納得するように、あぁ、やっぱりと思う。
色々な思いがこみ上げる。
そいつとの思い出だろうか、楽しいことしか思い出せない。いや、少し何かに嫉妬してやきもきした気持ちにもなっていたことも思い出す。
いつか二人で、見たこともない煌びやかな、夢のような世界の中で旅をして「どこまでも一緒に行こう」と約束さえしたように思う。
でもあいつは俺を置いていくんだな。
待てよ、あの約束は果たさねえのかよ。
俺は心のどこかでそいつに楯突いていたけど、その反面、すでに諦めが付いていたようで、これから俺は一人であいつの分まで生きるんだと、半ば希望のような思いにも溢れていた。

夢にしては具体的だ。幼い頃の記憶だろうか…と、俺が疑問に思うのは、俺にはその「経験による記憶」が全く無いのだ。
俺はそんな少年と会ったこともないはずだ。友を亡くした覚えもない。
でも、夢の中で幼い俺が思い浮かべているその少年の面影は、確かにどこかで見た覚えはある。
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