メインの弐
□グッドラック
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オレはどう言うわけか引きが弱い。
くじ引きなんかはあたりを引いたことがない。
かと思えば、罰ゲーム的なものは必ず引いてしまう。
悉く運がない。
でも、昔からそうだった訳じゃない。
学生時代、席替えのくじで好きなあの娘の隣の席をゲットした事くらいある。
…チャンスをモノに出来たかどうかは別として。
とにかく。
真選組に入ってからと言うもの、オレは運に恵まれてない。
今日も、そんな所に在るはずのない画鋲を踏んだ。
辺りを見回しても、鋲で止める張り紙のような物もない。
何でこんな所に落ちてるんだよ…。
部屋に戻って消毒を…
片足を浮かせてピョコピョコ歩いていると、土方さんと遭遇した。
「なんだお前、その歩き方は」
「いえね、落ちてた画鋲踏んづけちゃいまして」
手に持っていた画鋲を見せた。
「危ねえなあ。大丈夫か?」
土方さんはオレに肩を貸してくれた。部屋に着くと、ついでだと言って傷の手当てまでしてくれた。
昼、食堂で盆を持って配膳待ちをしていると、オレの番の前で今日のミックスフライ定食のササミフライが切れた。
オカズが一品なくなった。
悄げているオレを見て、土方さんがササミフライを一つ分けてくれた。
「最近あんまり揚げ物食うと胃がもたれんだよ」
なんて笑いながら言ってたけど、嘘なのはすぐに分かる。だって毎日あれだけマヨネーズを摂取しているのだから。
ご厚意に預かり、ササミフライを頂いて一口かじると、歯に違和感…
「ん?」
何かの金属の破片が入っていた。オレは間一髪、飲み込まずに済んだけど、奥歯が少し欠けたみたいだ。
「おまえ、ホントついてねえな…」
「ははは…」
ここまで来ると苦笑いするしかない。
その話を原田にすると、原田は笑いながら
「副長、さげ○んなんじゃね?」
なんて言った。
あぁ、確かにそうかも。
こうなったのも全部、土方さんと出会ってからだ。
そうは思っても、これはもう今更どうこう出来ることじゃない。
運には逆らえない。
ある日、オレは私服で街を徘徊し、偵察をしていた。
偶然、市中見廻り中の土方さんを見かけた。
偵察ついでに買っておいたタバコを渡しておこうと土方さんの方へ駆け寄った。
すると、同時に土方さんの方へ駆け寄る人影…
やばい、あれは…!!
「ひじかたさ…「土方、覚悟!天誅!」」
「!!」
土方さんは間一髪の所で身を挺し、その一瞬で相手を斬った。
オレの運が尽きた。
「おい、山崎…おい、嘘だろ?山崎…なぁ、おいってば!」
オレは土方さんと出逢ったことできっと一生分の運を使い果たしたんだ。それくらい幸せだった。
最後の最期に、運を命に代えて土方さんを守れた。
運命には逆らえない。
オレは最高にツいてた。