メインの弐
□最期
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「近藤さん、体の方はどうだ」
「あぁ、だいぶ良いぞ。それよりトシ、お前の方こそどうなんだ」
「はっ。あんな小さい鉛玉にどうかされるようなヤワな体じゃねえさ」
近藤さんが俺に聞いたのは体の事じゃなく、気の保ちようだとは理解していたが、わざとはぐらかすようにそう答えた。
そして、そうは答えたものの、俺の左足の回復は思ったより遅く、刀を杖代わりに歩くのが精一杯だった。
体の筋も、自分で見て分かるほどに細くなってきている。
「さぁ、近藤さん。ゆっくりしてる場合じゃねえ。松平のとっつぁんのとこに行かねえとな」
「あぁ、そうだな」
これで全てが終わる。
幕府ももう先はないことを理解している。
それを分かってて俺達は指示を貰い受けに行く。
近藤さんと俺は腹を決めていた。
だが、上からの命は、組織の名を変え、俺達の名を変え、戦を続けろと言うのだ。
真選組のまま解散をさせ、世間に紛れて今後のうのうと生きることは許されない、と。
負け戦と分かっている中で俺達を壊滅させ、記録上から抹殺するつもりだ。
「どうせ名前変えるんだから、そのまま逃げるもよし。どうするかはおめえらに任せるよ」
松平のとっつぁんも、もう権力も権限も奪われ、その地位は名ばかりで、実質的な飼い殺し状態だ。
「はっ。相当嫌われてんな、真選組(おれたち)は。で、どうする?」
苦笑いを交えて近藤さんに問う。
「俺達にはコレしかねぇと思って今日まで生きてきたんだ。俺は最期までコレで戦う。それがどんな最期だろうと、俺はコレしかねえんだ」
そう言って、近藤さんは刀を天に掲げた。
「そうかい。俺の大将がそう言うんなら、俺もそれに従うしかねえな」
半ば呆れてそう言った。
あんたはそう言う人間だよ。あぁ、忘れちゃなんかねえ。あんたはずっとそうなんだな。
付いて来れる奴だけ付いて来い。
そう言うと、隊士の数はぐっと減った。
咎めはしねえ。
逆に安心したくらいだ。
だが、隊としてはいくら何でも薄すぎる。形だけでも隊士を募る。寄せ集めで結構な数が集ったが、昨日今日の仲間が統一を図れるわけもなく、上の思惑通り、俺達は日に日に追いつめられていった。
その頃、時代は一日一日でめまぐるしく変わり、俺達は瞬く間に居場所が無くなった。
再度改名を申し渡される。
俺達は、新しく生まれ変わったこの国の「敵」となった。
改名虚しく、身を隠していたにも関わらず、近藤さんはしょっぴかれた。
かつて伊東の所にいた加納鷹夫と言う一人の隊士が、新政府軍側に居て、近藤さんの顔を覚えていたからだ。
「かつて伊東先生を俺達もこうして粛正したなぁ…。時代は変わったんだ。これも仕方のねえ事かもな」
近藤さんは加納にそう告げたらしい。
全てを受け入れ、近藤さんは旅立った。