メインの弐
□山崎を襲う惨劇
2ページ/6ページ
目を覚ますと、オレは布団の中にいた。
ここは…?
慌てて起きて辺りを見回す。
広い一人部屋…
スッと襖が開いて、そこに立っていたのは
「ザキ、起きたか」
局長!!
「あっオレ、あの、え?これ…」
慌てて布団から飛び出て姿勢を正して正座した。
「まぁ、そう慌てるな。寝てていいぞ」
「はい?」
「疲れてるんだろ?寝てていいぞ」
「いや、そう言うわけにも…」
局長はオレの側まで来ると、水差しとグラスを乗せた盆を置き、オレを布団に押しやった。
「水、飲むか?」
え?それ、オレのために持ってきてくれたんですか?
「あの、局長?」
「あんなところで寝てちゃ風邪ひくだろ。何やってんだお前は」
あぁ、オレ、昨日あのまま寝ちゃったのか?
屯所玄関から監察方の部屋に戻る廊下の途中で、ほんの少しと思ってしゃがんで目を閉じたら、そのまま眠りこけたらしい。
「トイレに起きたらお前が廊下に落ちてるんだもんよ、ビックリしたぜ」
局長は笑いながらそう言った。
「運んで下さったんですか?」
「だってお前、声掛けてもひっぱたいてもビクともしねえんだもん。死んでんのかと思ったよ〜」
「それは失礼いたしました…」
「そんな事はいいから、お前今日は寝てていいぞ」
そう言って、局長はオレの存在はお構いなしに隊服に着替えだした。
「あ、もうそんな時間ですか?オレも着替えてこないと…」
布団から出ようとすると
「ザキ!今日は寝てろって言っただろ!」
一喝された。
「いえ、でもオレどこも悪くないし、仕事もあるし、休んでる場合じゃないんです」
「駄目だ。局長命令だ。お前最近ろくに休んでないだろ。夜中にフラフラになって帰ってくるの、俺は何度か見てるぞ。それに最近顔色も良くない。身体だって、少し痩せたんじゃねえのか」
「でも、任務ですし…」
「バカかおめえは。いいか、ザキ。体調管理の出来てない奴が、いざという時命を落とすんだ。それじゃ困るんだよ」
「ですが…」
報告書だって出来てない。早く提出しないと副長にドヤされる。その上、局長に言われたからって、どこも悪くないのに休んでたなんて知れたら、切腹させられるかも…
「そんな顔すんな。心配なら要らねえ。トシのことなら俺が何とかしとく。それに此処なら、誰も無断で入って来やしねえから、ゆっくり出来るだろ?な。だからお前は休んどけ」
局長は、振り向き様に親指を立てたポーズで爽やかに笑って見せた。でも、ズボンのチャックが開いたままだった。
オレが何か言う隙を与えない様にか、さっさと部屋を出て行った。
チャックが開いているのを教えてあげられなかった。