メインの弐
□鉄(仮)
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「近藤さんよ、なぁ、どうにかなんねえか?」
「うーん、駄目だ」
「何でだよ!!」
局長室で、土方と近藤は話し合っていた。
「逆に、何が駄目なんだ?」
近藤の問いに土方は口を瞑る。
「鉄の何が気にくわないんだ、トシ」
「鉄が気に食わねえんじゃねえ。俺に小姓は要らねえって言ってんだよ」
「何で?小姓欲しいって言ってたじゃん!」
「だぁっ!、もう分かった、言うよ!!あのずんぐりむっくりの丸っこいのに俺の周りうろちょろされると邪魔っつーか鬱陶しいんだよ!」
「トシ、それ言い過ぎだぞ」
咎められ、少し黙って冷静さを取り戻そうとした。
「鉄だって一生懸命やってるじゃないか。それに…」
土方の目の奥を覗くように、近藤の目線が、土方の目に突き刺さった。
「山崎を雑用に使うな」
「!!」
「山崎はお前だけのもんじゃねえ。真選組の、監察だ」
「そ…そんなつもりじゃねえよ…」
「どんなつもりかは知らんが、とにかくお前は山崎に働かせすぎだ」
土方は、今まで雑務を山崎に押し付けていた。
その方が何かと仕事をする上で都合がいいからだ。
謂わば山崎は土方の実質的な「右腕」だ。
副長と監察、その長年の間柄からか、山崎との仕事は実に捗った。
山崎は例えば十有る仕事の一つ言えばその仕事の半分以上に片を付けることが出来た。
ただの「雑用」ではなかった。
どんなに鉄が頑張っていようと、信頼度も出来も、何もかも山崎には到底及ばなかった。
「鉄じゃ全然話にならねえ。仕事の能率も効率も悪くなる一方だ」
「それは今までが良すぎただけだ。山崎にやらせすぎたんだよ」
「山崎がそう言ったのか?山崎が、俺の下にいるのが辛いとでも、あんたに訴えたのか?」
「いや…」
「だったら山崎を返してくれ」
「駄目だ。山崎には今後、実働隊の補助隊士を兼ねてもらう。ゆくゆくは隊長格への格上げも考えている」
「はぁあ!?俺は聞いてねえぞ!!」
声を荒げ、近藤に楯突いた。
「言ってねーもん!!」
「あんた一人で勝手に決めたってのか?」
「いや、これは上からの辞令だ。ここ最近のあいつの活躍が認められたんだ」
「だからって、何で俺に…」
「トシ!!さっきから聞いてりゃ、山崎はおめえの何なんだ!!山崎はおめえのもんじゃねえ!!」
珍しく近藤は土方を怒鳴りつけた。
「公私混同とは思っちゃいねぇが、お前、山崎に頼りすぎだ」
「何の話だ」
「見りゃわかる」
「そうか…だったら俺は否定はしねえが、それとこれとは話は別だ。俺の仕事には、どうしてもあいつが必要なんだよ、近藤さん」
「これはもう決まったことだ。だったら鉄を山崎くらいに育てりゃいい」