メインの弐
□結ばれず、ほどけていく
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ある日街中で出くわし、拉致られた。
もう終わりだと思った。
奴は言った。
「殺しはせぬ。主が気懸かりだったでござるよ」
そして、隠し刀を仕込んだ三味線を降ろし、そっと置いた。
敵を眼前にし、そうまでした万斉の言葉を信じた。
決して心を許した訳じゃない。
「真選組の密偵」として、脳が働いた。
こいつがこの街に居るということは、鬼兵隊及び高杉もこの街のどこかに潜んでいるはずだ。
この機に万斉の懐に入り込めば、何かしらの情報が得られると思った。
「えぇ。不覚にも、誰かさんの御陰でこうして生きながらえてます」
「ほう。随分とふてくされた口を利くのでござるな」
「これでも武士の端くれ…ですから。敵に情けを掛けられ見逃されたなんて、一生の不覚」
「意に介さぬか。主の歌をも少し聴きたくなったと言ったでござろう。情けではない」
「で、そのオレの歌とやらは聞こえたのか?」
「今はその時期ではない。そう遠くない未来、その時が来るでござろう。楽しみにしておるぞ、真選組監察方、山崎退殿」