メインの弐
□結ばれず、ほどけていく
1ページ/9ページ
どうして、こんな安心しきった顔で寝ていられるんだ。
オレ達は
敵対し合う者。
隙だらけじゃないか。
いつでも寝首を掻ける状況だ。
オレをなんだと思ってるんだ?
「万斉…」
唇だけを動かして、声に出さず呟いて、
その頸もとに手を伸ばしてみる。
ぴくりともしない。
危機感無しか。
伸ばした手の、人差し指の指先で、万斉の頸もとをなぞる。
「ん…」
万斉が眉をひそめ、薄い反応を示した。
「退殿」
万斉の頸もと近くにあるオレの手首は咄嗟に掴まれた。
薄目を開け、オレの顔をじっと見つめ、ふっと笑った。
「退殿は拙者を殺さないでござるよ」
「何を、決めつけたように」
「そうに決まってるでござる。拙者には解る」
そしてそのまま引き寄せられ、万斉の腕の中に収まった。
あの時、万斉はオレを見逃した。
殺さなかった。
どんな意志で、どんなつもりで…
あの時、病院に運ばれた経緯も、後から聞けば匿名の通報だった。
許せなかった。
武士として、情けを掛けられた自分が。
そんなことをするこいつが。