メインの弐

□応じず
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いつからか肌を重ね合い、互いを求め合った。
退屈や欲や寂しさ、そんな隙間を埋めるだけの間柄だった。

身近に居て、歳も近くて、立場的に従順で、そんなオレに手を出しやすかったのだろう。

そういった欲を誰彼構わずぶつけたい年頃だという理解もある。
それは仕方のないこと。

そしてそんな年下の、あの人はオレの中に「女」を見出していたのかも知れない。

オレの体つき、立ち振る舞い、口調…
自覚がないわけじゃない。

むさ苦しい男所帯に於いて、どうしてもそういう「役割」を担うものは必要となる。
あの人にとってその「役割」が、たまたまオレだっただけ。

あの人と居ることは苦じゃない。
あの人は、オレに好きだとも嫌いだとも言わないから。
そしてオレもあの人のことを、好きでも嫌いでもない。
好意的でなければそんな関係ではいられないけれど。
でも、あの人は好きとも嫌いとも決して言わないから、オレはあの人のことを好意的にとっていた。


「おい、これオマエにやるよ」

なんでもないある日、あの人の腕の中、突然そう言われ小さな包みを差し出された。

「かんざし。女装とかすんだろぃ?仕事に使え」

「…」
「どうした?気に入らねえかぃ?」
「気に入りませんね。こんなことするあなたが。申し訳ありませんが、これは受け取れません。そして…今後一切、仕事の上以外であなたとは関われません」

これは、支配欲の片鱗。
たまったもんじゃない。
オレに対して何かしらの感情を持たないからこそ成り立っていた関係なのに。
何をあげればオレが喜ぶのか、どんな顔をして受け取るのか、そんなことを考えながら、あの人はあのかんざしを選んだのだろうか。

優しくしないで下さいよ。苦しくなるから。
嫌われたくもないんです。悲しくなるから。
だからオレは、オレ自身は、感情を持たないようにしていたのに。

あぁ…、

ごめんなさい。
オレは今までも、これからもその事象に対する返報の方法が見当もつかないのです。

あなたが、
あなただけが悪いんじゃない。

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