メインの弐

□創作だから許して
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「あー、働きたくないでござる」

二人きりの時、たまに土方さんは「トッシー」を降臨させる。
いや、トッシーは既に成仏していて、厳密に言うと土方さんがトッシーに「なりきる」。

土方さん本人が言っていたけど、
「アレは妖刀によって出てきた別人格なんかじゃねぇ、そもそも俺が持っていた本質かも知れねえ」
その通り、土方さんはたまに「トッシー」に、本音を語らせる。

「あー、またトッシー出てきた」

「山崎氏〜、こんなこといつまでもやってらんねーでござるよー」

まとめていた書類を放り投げ、オレの膝に頭を落とす。

もはや苦笑いしか出ない。
不器用な人。
なんなのそれ、照れ隠しのつもり?
オレの前では、あなたそのものが、本音を言ってくれて構わないのに。
それに、そんなことしなくたってあなたは

十分人間臭い「ダメな部分」持ってるの分かりますから。
プライド高くて、片意地張って、いつも格好良くあろうなんて思ってるけど、
あなた十分「格好悪い」ですよ。

オレ、そんなあんたが好きなんです。
そんなあんたをオレだけが知ってる。そんな優越感も好き。

頭を撫でると、嬉しそうに目を細めるのも。
黒豹を猫のように手懐けた猛獣使いの気分。

「ねぇ、副長」
「今はその呼び方やめて欲しいんですけどぉ」

トッシーの時の土方さんは、「副長」と呼ばれるのを嫌う。
そう、これは「現実逃避の手段」なのだから。

「オレ、トッシー嫌いなんです。あなたがトッシーに頼り、トッシーに甘えたら、オレの役割なくなっちゃうじゃないですか。あんたを甘えさせていいのは、オレだけ…にして下さいよ。ねぇ、土方、十四郎さん」

あんたは現実逃避のつもりでも、オレはどんなあんたも現実として受け止める。
オレが受け止めるのは、真選組副長、土方十四郎。

そしてその時、オレはあんたの部下じゃなくて、ただの「山崎退」ですから。

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