メインの弐

□生きとし生きるもの
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俺の為なら死ねるとか言ってんじゃねえよ。
テメエの職務、忘れたか。
生きて還って報告する、それがお前に科せられた義務だ。
俺を護るために命を懸けることは厭わないとな、そりゃ部下としては随分ご立派な志だよ。
だが、俺がいつそんなこと望んだよ。
俺を護る楯に成れなんて言った覚えはねえ。
ましてや俺の為に死ねなんて言わねえよ。
武士ってもんは命知らずなワケじゃねえ。
テメエの「生」を無碍にする奴なんざ、むしろこっちから願い下げだ。

生きろ、生きて俺の傍に在れ。それが俺を生かすことだろ。
ずっと、だ。

俺が生き続けるために、俺はお前を死なせはしねえ。
俺は俺で居る限り、俺で居続けるために、お前を逝かせはしねえ。


俺の命はお前に預けたよ。
お前は俺に命を捧げたんだろ。

互いの生を委ね合うって事は、互いの死を想像する事じゃねえんだよ。

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