メインの弐

□正しくあることの是非
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「あの…副長殿、お耳に入れておきたいことがございまして…」

表の喫煙所で一人、たばこを吸っているあのおっかない人を見つけ、声をかけた。

「あ?お前、誰?」
「入隊希望者の、山崎と申します」
「はぁ、で、そんなお前が俺に何の用だ?」

やっぱり怖い!何で瞳孔開きっぱなしなの?何で睨みつけてくるの?!

恐怖心を落ち着かせ、一息ついて話し始めた。
「実は…」

先程の一連のやりとりを報告した。

「わかった」

副長殿は、たばこを消し、それだけ言って去って行った。

オレのしたことは、正しかったのだろうか。
告げ口にすぎないじゃないか。
少なからず良心が傷んだ。
なぜなら、立場が違えばあいつ等だって決して悪ではないからだと思ったから。
違う目的を完遂する事を目指しての敵対関係において、正義と悪など存在しない。

オレの両親は、大阪の片田舎で開業医をしていた。
攘夷戦争真っ只中の時代。
敵、味方関係なく、負傷者を救うのが医者の務めだと、よく言っていた。
でも、
戦乱に巻き込まれて両親はあっけなく殺された。
斬る方も、敵味方なく斬るのが務めなのだろうか。
あんな時代だからな、親が居ないなんて、何もオレだけに限った事じゃなかったし、
何より、自分は無力すぎた。
仕方ない、何も出来ない子供なのだから。
子供のオレが両親を守る事なんて出来やしなかった。
オレは誰も、何も怨んではいやしない。

正義も
悪も
存在なんてしない。
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