メインの弐

□正しくあることの是非
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「山崎…ん?これなんて読むの?」
「さがる、です。やまざきさがる」

そう、オレの名は山崎退。
泣く子も黙る武装警察「真選組」の新規隊士募集の試験会場に来ている。

「なになにぃ?んー…前職はフリーター…あ、君、関西の出なんだね?」
「はい。と言っても関西にいたのは幼少期だけでして」
「道理で訛がないわけだな。で、志望動機は?」
「武士に憧れて、オレも強くかっこいい武士になりたいと思いまして」
「ほう…」

ゴリラの容姿をした面接官(この人が局長らしい)が、オレの言葉に感心したかのように頷く。
正直、もっと尤もらしい真っ当な志望動機を用意しておけばよかったとも思ったけど、
本当の志望動機が「食う寝る所と安定した収入の確保」なオレには、これくらいしか言えなかった。
ダメならまた次を探せば良いだけのこと。
あいにく、この目の前にいるゴリラ風のここの局長さんとやらは、そんなに畏まった感じでもないし、こんなこと言っては失礼だけどアタマも弱そうだし、情け混じりの話に弱そうだし、これくらいの志望動機で十分な気もする。

問題は、さっきの実技。
あそこの監視官はどうやらここの副長で、「鬼の副長」なんて二つ名があるくらいおっかない人。
瞳孔の開ききった目で一人一人をじっくりと、睨みつけるように見ていた。

オレは地味だから、他に埋もれて目を付けられることはないと思っていたけど、ここに集まる奴って言うのはやっぱり腕に自信のある奴ばかりで、
オレもどちらかというと一般的な平均よりは体力と運動神経は優れている方だと自負してたけど、そんなレベルじゃない。
逆にオレ、浮いちゃってたかもな。
まぁいっか。
ダメならダメで…
あのおっかない人に目を付けられるよりは良いとして諦めれば良いだけさ。
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