メインの弐

□タイトル未定
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続き

とある債務者から、纏まった金が出来たので受け取りに来て欲しいと一本の電話があった。
債務者は一人の子供を抱えるシングルマザー。パートをして子を養っていた。
借り入れ理由は「生活費」だったが、ここにわざわざ借りに来たっていうことは、そんなちんけな理由じゃないのはすぐに判った。
調べれば街金にも複数社から借りている。しかも少額を頻繁に引き出して気づかぬ内に積もっていくタイプの借り方。その時点で計250万。
うちでの初回借り入れは三万だった。
パチンコ狂と見た。
俺らは深くはツッコまない。立ち入らない。貸した金がどんな使われ方をしようが関係ない。返ってくるならそれでいい。

受け取り場所に指定されたのは、その債務者宅。
呼び鈴を鳴らすが一向に出て来ない。人が居る気配はする。物音がする。
もう一度呼び鈴を鳴らすと、中から悲鳴のような声が聞こえた。
ドアノブに手を掛ける。施錠はされていなかった。
部屋の奥から人を打つ音が聞こえて、俺はドアを開け入室した。
溜まりに溜まったゴミの山。散らかった部屋。典型的なダメ債務者の部屋。
入って小さな靴を脱ぐスペースに繋がって六畳ほどのダイニングと、その奥には居住スペース六畳の1DK。
居住スペースに七人程の大人が居て、その中心に…
ガキが裸で縛り付けられていた。カメラを回す大人も居た。
こいつは債務者の子供。
涙と汗と鼻水と…精液で顔がグシャグシャに濡れている。
顔も躰もよく見りゃ痣だらけだ。
一人の男に声を掛けた。
「おい、こりゃどう言うことだ」
「あ?金さえくれればコイツ好きにして良いって呼ばれて来たんだよ」
「おまえ、どこのモンだ」
「俺はまぁ…映像製作会社の人間ってとこかな」
「こいつ等皆そうか?」
「いや、何人かは別だな」

恐らくその何人か、と言うのは俺と同じ立場の人間。
金返すから来いと呼び出された金融会社のモンだ。

「呼び出した張本人は、女だったろ。あいつはどこ行った?」
「知らねえなぁ。ここに来た時はもうこいつ一人だけだったし」

俺は家の中を漁った。
女の持ち物らしき物は一切無い。ガキ残して飛んだか…。

その間にもガキは薄汚い男にレイプされていた。
コイツは、売られたんだ。

薄汚い男に無理矢理犯され泣きながら、俺に縋るような目を向けた。
そんな目で見んじゃねえ。俺が何をしてやれるって言うんだ。

これで何人目だ。人生が狂っていく人間を見るのは。

「おい、おっさん。それでこの映像には一体いくらの値が付く算段なんだ?」
「ショタホモ無修正流出でざっと数千、って所だろうな」
「で、女に払う約束の金額は」
「二百」

俺はおっさんをブン殴った。

「バカにしてんのか!金返すって言うから来てやったのにそんな額じゃ全額返済に全然足りてねえんだよ!!ヤメだ、こんな茶番は止めろ」

そう言って俺はカメラを回す奴もブン殴ってカメラを奪い取り床に叩きつけた。
レイプしてる奴も顎を蹴り上げてやった。

「おめえらも諦めて今日の所はさっさと帰れ」

ほかの金融会社の奴らに睨みを利かせると、おとなしく帰って行った。

「な…にすんだよ」

おっさんが殴られた頬を撫でながら俺を睨んだ。

「あんたが女とどんな約束したか知らねえが、契約は無効だ。帰れ。カメラの弁償と治療費ぐらい出してやるからそれでチャラにしろ。じゃなきゃ次は俺がおまえ等を、サツに売る」

俺は自分の名刺を放り投げ、おっさん等を蹴散らすように家から追い出した。
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