メインの弐
□青い春を思う
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「ジミー、ちょっと話があるネ。今、時間ヨロシ?」
そんなに接点のない二人。
交換留学生の神楽が、クラス一の地味男、山崎に声を掛けた。
神楽は山崎の返事を聞かず、山崎の手首を掴み教室の外へ連れ出した。
「えっ、あの?ちょっ…チャイナさん?」
「こっちネ」
神楽は山崎をぐいぐいと引っ張ってズンズン歩いていく。
着いた場所は屋上…
「あの…話って…」
あれ?これはもしかして?!なんて、山崎はほんのり淡い期待を抱いた。
「処女捨てたいアル」
まるで「今日の晩ご飯はカレーが食べたい」とでも言うかのように、神楽は堂々と言いはなった。
「…はい?」
「聞こえなかったカ?処女を捨てたいって言ったアルよ」
「で…それをオレに言ってどうしろと…?」
「鈍い奴アル。こんな面倒臭いモノ押しつけられるの、ジミーくらいしか居ないネ。おまえ、私の処女もらうヨロシ」
山崎は頭を抱えてしゃがみ込み、一旦頭の中を整理した。
すぐに一人の人物が脳裏に浮かんだ。
「あの…もしかして沖田さんが…」
山崎が発したその人物の名前に、神楽は顔を真っ赤にして反応した。
「かっ、関係ないアル!あんな奴!ただ、処女は重くて面倒臭いアル!そういう年頃ある!!」
神楽の台詞の中に、山崎は納得いく箇所があった。
あぁ、沖田さんの口から「処女は重くて面倒臭い」とでも言われたか、そんな話を聞いてしまったんだろう。
それこそ、そういうことを言ってみたい年頃なだけなのに。
「男のそういう台詞は、思春期特有の冗談って言うか、本気じゃないですよ。それに、」
山崎はあきれたような口調の後、少し間を空けて神楽の顔をしっかり見据えた。
「チャイナさんだって、本気でオレで処女捨てたいなんて、思っていやしないでしょ?」
山崎は、そう言って神楽の頭を2、3、ポンポンと撫で、その場を後にした。