メインの弐
□意
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監察の仕事ってのは、生半可な気持ちじゃ務まらねえ。
敵の手の内に入り込み、その身を置く事も少なくない。
下手打ちゃ其処には「死」有るのみ。
監察方、山崎退
俺はこの男に幾度となく仕事を与えた。
この男の命を、軽視しているわけじゃない。
生きて、情報を持ち帰るまでが仕事だ。
山崎はアレでデキる男だ。信頼があってこそ、俺はあいつに命を下せる。
「山崎、仕事だ」
「はいよっ」
その返事と共に奴の目付が変わる。
不敵で、冷酷で、感情の無いような、それで居て強い決心を思わせる目付。
一通りの任務の説明を終えると、山崎はすっと立ち上がる。
その背中に、俺は不覚にも、手を伸ばし引き止めたい衝動に駆られた。
不意に山崎が振り返る。
「副長?」
「なんだ…?」
「莫迦なことをお考えになるのは止して下さいよ」
ダメだな俺は。
何を言わせてるんだ。
監察の目は誤魔化せねぇってか。
「オレはただ、死んでも良いと思えるような恋をしているだけなんですよ…土方さん」
そう言って山崎は穏やかに微笑んで部屋を去っていった。
訊きたいことが山ほどあんだからぜってぇ生きて帰って来いよ。