メインの壱

□証
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副長がある日、オレに頼みがあると言ってきた。
何かと思えば、写真をくれと言い出した。

監察であるオレは、写真に収まることも、残すことも禁忌としている。
遺影用の写真と、組手帳の証明写真以外で、オレの写っている写真はこの世に存在していない(はず)。

だから勿論、それが例え副長様の直々の頼みでも、容易に首を縦には振れない。

そもそも、オレが監察に任命された時、
「総てに於いて確たる証拠を残すべからず」
と、今までの写真や日記類を全て焼き払うように命じ、今後も、その存在を知らしめるような物を残すなと言ったのは、副長本人だ。

「おめぇは一々堅えんだよ。良いじゃねえか写真くらい」

副長は、口を尖らせ、少し拗ねて怒った様な口振りをする。
ぶりっこですか…?正直ちょっと気持ち悪いです。

「生きた証すら残すなと仰ったのは、あんたですよ!」
「だーかーらっ、その俺が良いっつってんだから良いんだよ!くれよ!っつか、一緒に写れよ」

え?何?この人、オレと写真撮りたいの?それを持ち歩きたいの?考えること乙女なの?この風貌で?マジでか!?

「俺の一生の宝にしてやるよ。お前の存在、お前と居た日々、その全ての証を。俺が責任持って棺桶まで肌身離さず持ってってやるから、な?」

ちょっ…マジで言ってんすかそれ…ヤバい、ちょっとオレ、泣きそう…。

「そんな顔すんじゃねえよ。おら、笑って一緒に写真に収まってくれりゃ良いんだよ」

そこに置いてあったのは、もう職務で使わなくなった小さなポラロイドカメラ。
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