メインの壱

□焦れったい
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そう言って、桂は目を綴じオレの唇に軽く口付けをした。
オレが驚いた表情を見せると、桂も驚いた顔をした。

「何を驚いているのだ?!お前の当初の目的は、そうじゃなかったのか?」

当初の目的…そんな物はすっかり忘れていた。

「桂さん、オレを警戒せんのですか?」
「お前からは、俺を捕らえてしょっぴこうなどと言う気配を一切感じられん。お前の目はあまりにも正直だ」

そしてまた、唇と唇が触れた。
一度唇を離し、桂の口の紅を、オレは親指の腹で擦るように拭い、それから、食らいついた。

深く永い口付けをし、息が上がってきた頃、桂はオレの着流しをはだけさせ、丁寧に舌を這わせた。

女のようなしなやかな動作。
手付きも、目つきも、舌使いも。
オレが変装で行う女装とは比べ物にならない。
それは、にじみ出る育ちの良さ、だろうか…
流れるような動きと愛撫に、目を奪われ、心を奪われていく。

「退よ、お前、俺を抱くのか?それともこのまま俺に身を委ねるのか?」
「え…いやぁ…あのぅ…」
「どうした?抱くのなら、俺を女と思って抱けばいい。男は初めてだろう?」
「どちらも経験無いんで…」
「なに!?貴様、そんな清い身であんな大胆な行動に出たというのか!」
「はぁ…」

清い身と言われても、別に強い意志があって貞操を守ってた訳じゃない。
機会もその気も無かっただけで、今更大切にする物でもないと思ってる。
全くなかったわけでもない。
あのむさ苦しい男所帯の組織に居れば、事ある毎にそう言うところに連れて行かれることはある。
ただ、いざその時になると、相手がどんなに良い女でも、可愛い子でも、どうもに気乗りがしない。
受け身に徹してみても、最後まで出来なくて、苦笑いを繰り返し、早々にその場を立ち去るという、何とも情けない時間を過ごす。
興味がない訳じゃない。寧ろ一人で処理するのは多分、人並みにはやってる方だと思うし、体が鈍感でもないと思う。
ただ…今はっきり気付いたのは、桂になら、人並みに反応する。流れのままに、最後まで出来る。そう思った。

「不安になるのも致し方ない訳だな…」

桂はそう言って手を止めた。

「服を正せ。俺がお前を汚すわけにはいかん」
「桂さん、いいんです。お願いです…続けて…欲しいんです…」

恥ずかしくて声が小さくなっていく。
桂は目を見開き、オレを見つめる。

「いいのか?手加減は出来ぬかも知れんぞ…」

桂が再びオレに覆い被さり、オレの両手首を掴み、床に押さえつける。

「形はどうあれ、あなたとなら重なり合って一つになれれば、それでいいんです…桂さん」
「随分と可愛いことを言うではないか。やはりあんな所(真選組)にいるのは勿体ない…」

桂の唇がゆっくりとオレの口に触れ、少しづつ舌を侵入させてきた。


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