メインの壱
□偶然の旅路
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パトカー巡回での帰り道。
副長は助手席で煙草をくゆらせる。
「代わって下さいよ。疲れちゃいました」
「あぁ。んじゃその辺で一旦停めろ」
コンビニの駐車場で停車して、交代する。
ここから頓所までは大体小一時間程の距離。
さっきまでオレが座っていたシートの位置を後ろにずらす。
副長はオレなんかよりずっと、脚、長いですからね。
「安全運転でお願いしますね」
「わぁってるよ」
ルームミラーに手を掛け、後方確認をしながら自分の視線に合わせて位置を調整する。
その瞬間の眼差しがゾクゾクする程格好いい。
そして、カーナビの音声案内を切る。
どうも副長はカーナビが苦手なようだ。
音声案内にまともに従えた事がない。
信号を曲がるタイミングが分からなくなるらしい。
そもそも機械なんぞに指示を出されるのが癪に障るらしい。
苛々をぶつけて2、3台はカーナビを潰している
見かねてオレが指示を出したら、「カーナビの二の舞になりてえか」と、瞳孔かっぴらいた眼で睨まれ、凄まれた。
その上、方向音痴なのだ。
この距離を副長が運転すれば、多分二時間コース。
二時間はドライブデートが楽しめる。
「俺が眠くならねえように、なんか面白い話しろよ」
「はいよ」
今日はどんな景色を見せてくれるだろう。