メインの壱

□せつな
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それは何でもない日で、
本当に普通の、いつも通りの、

隣に副長が居て、
歩いていた。

沖田隊長も、局長も居て、
オレと副長の前を歩いていた。

隊長と局長が、こっちを振り向きながら、四人で談笑しながら、
ただ、普通に歩いていた。

一つ、話題が終わって隊長と局長が、また前を向いて歩いて、

オレは、何故か突然副長に肩を寄せられ、寄り添うように歩いていた。

どうしてそうされたのか分からない。
ただ、副長の、オレの肩に回された手がすごく優しくて、

何故か涙がこぼれた。


それに気付いた副長が、立ち止まり、オレをのぞき込んで
「おい、どうした?」
「いや…なんかわかんないけど…何でもないっす」

急に意味もなく泣き出して、どやされると思った。

「すいません…」

泣きながら謝った。

泣き止め、オレ、泣き止め

何度も頭の中で繰り返しても、次から次に涙が溢れ、
しゃがみ込んで声を上げて泣いた。

副長の手が、優しかったから

切なさがこみ上げて、

「すみません」

何度も謝った。

隊長と局長は、もしかしたら気付かない振りしてくれているのかも知れない。
二人は、振り向きもしないでどんどん先を歩いて行って、

その場に副長と二人っきりになった。

しゃがみ込んで、顔を塞いで、まるで子供のように声を上げて泣きじゃくるオレに、
副長は、その優しい手を頭に乗せて撫でてくれた。

「あぁ、お前はよく頑張ってるよ」

そう声を掛けてくれた。

「大丈夫だ。お前は、よく頑張った」

しゃがみ込んでいるオレに覆い被さるように、ふわりと抱き締めてくれた。

「もういいぞ、山崎。俺もお前が好きだ。お前だけが苦しい訳じゃない」

オレの思いは、副長に通じていたんだ…

まさかこんな、何でもない普通の日に、

オレを選んでくれるなんて。

もう、本当に涙が止まらない。
泣き止むまで、副長はそこに居て、頭を撫でてくれた。

たったワンアクションでオレを泣かせた副長は、やっぱりすごいと思った。

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